2018 Fiscal Year Annual Research Report
正準テンソル模型がつなぐ量子重力とランダムテンソルネットワーク
Project/Area Number |
15K05050
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笹倉 直樹 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (80301232)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 量子重力 / テンソル模型 / パーシステントホモロジー / テンソルランク分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の理論物理学は、量子力学と一般相対性理論が互いに相容れないという深刻な量子重力の問題を抱えており理論的な解決が求められている。また、観測という側面からも、最近のブラックホールの直接観測や初期宇宙の観測などにより、近い将来量子重力的現象が見える可能性もある。 量子重力には様々な提案がある。中でも、時空を先験的に含まない理論から、有効な記述として時空が創発されるとする考えが面白い。本研究課題は、そのような提案の一つである正準テンソル模型の波動関数を調べ、時空の創発現象を見出そうとするものである。 正準テンソル模型は力学変数としてテンソルを用い、正準形式の第1種拘束系として定式化されている。その量子論における厳密な波動関数は分かっているが、現時点では、それからどのようにして時空の創発現象が得られるかがはっきりしていない。しかし、本研究課題の補助により、その解決に向けての重要な進展があった。 一つは、時空の創発現象(形式的連続極限)を仮定すれば、古典的正準テンソル模型は一般相対論(+スカラー場+高階スピン場)を生成することを示したことである。二つ目は、リー群の対称性で不変なテンソルの値において、波動関数がピークを持つことを示したことである。これはそのようなテンソルの値が量子論的に確率の高い配位であることを示している。もしそのようなテンソルの値を時空と解釈できれば、リー群の対称性を持つ時空が確率的に好まれことになり、実際の時空がリー群の対称性(ローレンツ、ドジッター、ゲージ)を持つという事実とも合致することになる。 実際に、最終年度において、テンソルの値と空間との間の対応関係を見出した。これは、最近のデータ解析の数学的手法であるテンソルのランク分解とパーシステントホモロジーに基づく。上記の波動関数に応用し議論するにはまだ技術的困難があるが、その解決への糸口はあり、研究を続けている。
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Research Products
(6 results)