2015 Fiscal Year Research-status Report
点状相互作用をもつ余剰次元模型の真空配位に基づくクォーク世代構造の解明
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15K05055
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
坂本 眞人 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30183817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹永 和典 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (50379294)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 余剰次元 / ニュートリノ質量 / 局在化 / ディラック質量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、余剰次元模型の枠内で、ニュートリノ質量問題の解決に焦点を絞って研究した。ニュートリノ質量は、他のレプトンやクォークの質量に比べて桁違いに小さい。レプトンやクォークの質量はヒッグス場の真空期待値から得られると考えられているが、ニュートリノも同じヒッグス場から質量を得ているとすると、なぜニュートリノだけが桁違いに小さい質量をもつのか、非常に不自然である。これがニュートリノ質量問題とよばれるものである。我々は、ニュートリノ質量起源はヒッグス場から来ておらず、別の機構から質量を獲得しているというシナリオを想定し、その質量獲得の機構が自然と小さな質量を生成すると考えた。そこで我々は、余剰次元模型では一般に高次元フェルミオンは4次元の観点からみるとディラックスピノル場であり、カイラルではない点に注目した。(4次元標準模型では、全てのレプトンとクォークはカイラルフェルミオンであると仮定されている。)我々の模型の面白い点は、高次元の観点ではディラックスピノルなのだが、4次元のスピノル場で分解してみると、荷電レプトンとクォークは標準模型で要請されるカイラルフェルミオンとして自動的に現れる点と、中性レプトンであるニュートリノは、ディラック質量項を(ヒッグス場なしに)持つことである。このとき、ニュートリノの質量の値は、系のもつ典型的なエネルギースケールに比べて、指数関数的に小さいことが示される。これは、ニュートリノが余剰次元方向に局在化しており、余剰次元方向の重なり積分が指数関数的に小さな値をもつことに起因している。今回の研究によって、ニュートリノが他のレプトンやクォークに比べて極端に小さい質量をもつことを、自然に説明する機構を与えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標準模型におけるクォーク・レプトンの構造を余剰次元模型の観点から明らかにすることが本研究課題の目的である。本年度は、特に、ニュートリノ質量問題に焦点を絞って研究を行った。ニュートリノは質量をもっていることが、ニュートリノ振動実験で明らかになり、他のレプトンやクォークに比べて極端に小さな質量をもつことが確定的になった。荷電レプトンやクォークは、ヒッグス場の真空期待値からその質量を得ると考えられているが、ニュートリノも同じ機構によって質量が与えられているとすると、なぜニュートリノだけ極端に質量が小さいのかが自然に説明できない。標準模型の枠内では、恐らく自然に説明することはできないだろう。我々は、点状相互作用をもつ余剰次元の枠内で、ニュートリノだけが極端に軽い質量を生成する新しい機構を提案した。この機構は、我々が提唱する、点状相互作用をもつ余剰次元模型において、特に不自然なパラメータフィッティング無しに、ニュートリノ質量問題を解決できる点が重要である。ただし、我々の解析はまだ不十分で、クォーク・レプトンの世代数問題の解決の機構と併せての解析がなされていない。また、質量を摂動の最低次までしか評価していない。実際には、質量を対角化してその固有値をきちんと求める必要がある。これらの評価については、次年度の課題として残されている。 課題は残されているとはいえ、ニュートリノ質量問題の新しい解決の機構を提唱できたので、本研究課題に沿っての進捗状況はおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、標準模型におけるレプトンとクォークの世代構造を、点状相互作用をもつ余剰次元模型によって解決することである。上で述べたように、ニュートリノ質量問題の解決に向けての新しい機構を、(我々が提唱している)点状相互作用をもつ余剰次元模型の枠内で提唱することに成功した。荷電レプトンとクォークの質量階層性問題については、すでに解決の機構を我々は提案していて、その機構が現象論的にうまく働くことはわかっている。今後の課題は、クォーク・レプトンの世代数問題を解決することである。多くの余剰次元模型が提唱されているが、ほとんどの研究はフェルミオンの質量階層性や質量獲得の機構などの解決を目指すもので、世代数問題の解決を直接取り扱った研究は非常に限られている。我々の提唱する点状相互作用をもつ余剰次元模型は、世代数問題を解決する可能性をもつ、数少ない模型の1つである。今後の研究は世代数問題解決のための解析も視野において研究を進めていくつもりである。特に、真空エネルギーを計算することによって、どのような配位が真空として選ばれるのかを明らかにし、クォーク・レプトンには世代数が1より多い方がより安定なのか、そして、もし世代数が1より多い場合は、その世代間に質量などの階層性が表れるのが自然なのかを解明して行きたい。そのためには、真空エネルギーに対する摂動の1ループ計算を行う必要がある。そして得られた表式から、その真空エネルギーを最小化する配位を調べる必要がある。そこでは、解析的な計算では答を求めることは難しいと予想しており、パソコンを使って数値的に解を求める必要があると考えている。この部分は実際に解析を行ってみないとわからない部分で、当初予定していたものより高性能なパソコンが必要となると想定される。そのために本年度の予算を次年度に繰り越しておく必要がでてきた。
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Causes of Carryover |
数値解析のためにパソコン購入を予定していたが、当初の予定より高性能なパソコンが必要になると予想されたため、次年度に予算を繰り越して次年度の予算も合わせてパソコンの購入を予定している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越した予算はパソコンの購入費の一部にあてられる予定である。
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Research Products
(8 results)