2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05056
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
高橋 智彦 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (10324956)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 素粒子論 / 弦理論 / 弦の場の理論 / 境界条件変更演算子 / 非可換時空 |
Outline of Annual Research Achievements |
Erler-Maccaferriによって提唱された方法に基づいて構成した古典解に関する研究を前年度に引き続いて行った。境界条件変更演算子を用いたこの解は定数磁場に対応する解であり、背景時空としてトーラスを考えるならば、チャーン数が非自明な値をとる解となる。点粒子の場の理論では、位相的に非自明なゲージ場はトーラスを一周したときに不連続点をもつのが一般的である。このような状況が弦の場の理論においてどのように反映されるのかについて、古典解のプロファイルを通じて明らかにする研究を行った。結果として、弦の場の理論においては位相的な不連続性が現れず、古典解の成分場がトーラス上で一価関数となることを明らかにした。 点粒子の場の理論における位相的な不連続性は局所的な領域をつなぎ合わせることから生じるのに対して、弦場とゲージ変換に関しては局所的な領域の中だけに閉じて考えることができない。弦の場の理論のこの非局所性の結果として古典解の一価性が生じているという考察を行った。 次に、古典解に対するゲージ不変量の計算を行った。このゲージ不変量は、バルクの閉弦と古典解が表すDブレーンとの結合に対応しており、Born-Infeld作用から導いた結合と比較されるべき量である。結果として、古典解に対するゲージ不変量とBorn-Infeld作用からの結合とが一致していることを確かめた。我々の古典解が正しくErler-Maccaferri解であることを示す結果である。 これらの研究成果についてイスラエルでの国際会議、日本物理学会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
弦の場の理論において磁場が凝縮した古典解に関する研究について、途中経過は国際会議、日本物理学会で講演し、最終的にはプレプリントにまとめて発表することができた。また、閉弦の物理との関連について新たな研究成果が得られつつある状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
開弦の場の理論における閉弦理論の対称性がどのように見えるかを明らかにしていく。磁場が凝縮した古典解の研究は、弦の場の理論が通常の場の理論とは異なり、非局所性が強く関与した理論であることを示唆していた。例えば、閉弦との結合だけでは古典解の位相的性質がわからないのは、弦場の非局所性の結果であると考えられる。新たな位相不変量を探りながら、閉弦理論の特性を見出すことを試みる。 並行してタキオン真空上の開弦の場の理論を再考し、閉弦理論の対称性を探りつつ時空構造との関連を明らかにする研究を行っていく。
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Causes of Carryover |
計算機の故障等に備えた経費については正確に計画できない部分があり、差額が生じるのはある程度やむを得ない。計算機関連の経費を中心にして執行する計画である。
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Research Products
(5 results)