2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K05057
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
船久保 公一 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60221553)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電弱相転移 / 有限温度場の理論 / スファレロン |
Outline of Annual Research Achievements |
既に完成している有限温度の可換ゲージ理論におけるゲージ場の熱的質量の非相対論的再和法を非可換ゲージ理論に拡張する試みを行った。 今年度は有限温度の有効作用を計算する準備として、有限温度量子色力学で研究されているHard Thermal Loop (HTL)法による結果を再現し、且つ、質量スケールのある電弱理論にも拡張できるような形式を考案した。その応用として具体的にゲージ場の2点関数でHTLの結果を再現することに成功した。 また平成27年度半ばに、TyeとWongにより提唱された[Phys. Rev. D92 (2015) 045005]、周期的スファレロン背景がある場合の量子状態がBloch波になることにより、高エネルギー散乱実験でバリオン数が変化する過程が起こり得るという機構を吟味することに着手した。 特に、電弱相転移温度におけるスファレロン過程の脱結合条件は本研究と密接に関係しており、量子状態がBloch波となる場合に、脱結合条件が変更されるかの確認は重要である。今後、ヒッグス粒子の性質と電弱相転移の関係を調べる際に、例えば新たなスファレロン脱結合条件により拡張模型の重いヒッグス粒子の質量への制限がどの程度変更されるかを知っておく必要がある。 現在はTyeらの有効作用の導出に一部誤りがあることを発見し、正しい作用とそれを量子化して得られるエネルギー固有状態の導出に取り掛かったところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度の途中で新たな課題が生じたために、有限温度の電弱理論における熱的質量の再和法については、有効作用の2点関数のみで、3点以上はWard-Takahashi関係式を援用して導出可能であると期待するが、この課題には未着手である。この課題が終われば、2ループの繰り込み可能性の議論に進むことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の前半には、新たな量子状態を考慮したスファレロン脱結合条件の導出を終え、学会などで発表し、その後論文にまとめる予定である。 それから本来の有限温度の電弱理論における熱的質量の再和法の開発と繰り込み可能性の証明を進める。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに執行したが、海外共同研究者の招聘のための旅費に不確定さが生じた結果、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度も主として旅費に使用する。
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