2016 Fiscal Year Research-status Report
離散的手法と数値計算に基づく超対称ゲージ理論の非摂動的探求
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15K05060
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松浦 壮 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 教授 (70392123)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超対称性 / 数値計算 / 格子ゲージ理論 / アノマリー / 局所化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、改良された杉野模型について理論的・数値的な解析を進め、得られた成果を論文にまとめた。 理論的な解析から新たに分かったことは、リーマン面上に定義された杉野模型は、連続理論と同様、リーマン面が持つトポロジーの性質を引きずってアノマリーを持つということである。これ自体は理論の特性であり、逆にこの性質が連続理論から正しく引き継がれているお陰で、格子理論でも局所化の手法を使うことが出来る事が示された。 ただし、これは数値計算にとっては障害になり得る。杉野理論においては、アノマリーはU(1)電荷が異なるフェルミオンの数の不均衡として現れる。従って、この理論のディラック作用素のパフィアンは必然的にU(1)位相を持つことになり、そのU(1)位相をちょうど相殺するような演算子のみが期待値を持つはずなのだが、従来の数値計算ではそのような位相を無視して統計平均を取るため、理論の構造を壊してしまうことになる。 そこで我々は、アノマリーを持つような理論の数値計算に適用出来る新しい位相の取り扱い方法を考案した。"anomaly-phase-quench method"と名付けたこの方法を用いると、理論計算から期待される物理量を数値計算によって正しく求めることが出来ることが確かめられた。 また、モンテカルロ法で数値計算をする時に常に問題になる符号問題も、この方法によって回避されることがわかった。実際、ディラック作用素のパフィアンが持つ複素位相からアノマリー由来の複素位相を取り除いた結果、残りの位相はある値の周りにピークを持つことがわかった。これは、連続理論の考察から期待された通りの振る舞いである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である2次元理論の数値計算は順調に実行中である。当初は想定していなかった、連続極限を取る際に現れる困難が現れたために、数値計算の連続極限の考察やN=(8,8)への拡張に多少遅れが見られるが、概ね順調であると評価出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的な目的である4次元ゲージ理論の数値計算に辿り着くためには、2次元理論の連続極限を取り、非可換球面を安定化させる技術を確立する必要がある。平成29年度はこの2点に焦点を当てて研究を進める予定である。特に、「現在までの進捗状況」でも述べた通り、連続極限を取る際には理論的に困難が予想されているため、こちらについては理論面からの考察も必要になる。
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Causes of Carryover |
数値計算が計算サーバを使うことなくPCで実行出来る範囲であったため、本来予定していた計算サーバの購入を次年度に延期した事が理由であるが、計算サーバは本研究計画の実行のためには確実に必要になるため、次年度以降の必要な時期に購入する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
該当年度に購入しなかった計算サーバを次年度以降に購入する予定である。
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