2020 Fiscal Year Research-status Report
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15K05062
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
林 青司 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80201870)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 標準模型の階層性問題 / 標準模型を超える理論 / ゲージ・ヒッグス統一理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒッグス粒子の発見により最終的な確立を見た素粒子の標準模型は、最も成功した自然科学の理論であると言えるかと思うが、にも関わらず、この理論には、正にこのヒッグス粒子にまつわる基本的で重要な理論的問題点が存在する。特に有名なのが階層性問題であるが、その解決を目指す「標準模型を超える理論」の中で、当該研究課題の研究では、高次元ゲージ理論の枠組みに基づきヒッグス粒子をゲージボソンの余剰次元成分と見なすゲージ・ヒッグス統一理論(GHU)に注目し、この理論の新展開をはかると共に、今まできちんと議論されて来なかった、この理論の基本的な性質に関する論点について決着を付ける事を主目的としている。 今年度は、昨年度行った、GHUにおける“空間的インスタントン”解、その't-Hooft Polyakov monpole のBPS状態との関係に関する研究の成果をまとめた論文を学術雑誌に掲載した:J. Phys. Soc. Jpn. 89, 084101 (2020)。残念ながら、海外、国内への出張がコロナ禍の中で叶わず、研究集会での研究発表を行う機会が得られなかったが、次年度の状況の好転に期待したい。また、今年度は、上記研究とも関連するものとして、QCDのθ真空によく似た構造を持つGHU の縮退した真空状態に関する研究、更には、QCD にてθ真空に伴って現れるstrong CP problem をGHU において自然に解決する可能性に関する予備的研究を行った。この研究に関しては、次年度論文にまとめ発表したいと思う。従来のstrong CP problem の解法とは質的に異なる解法が得られるものと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べた様に、今年度は、ゲージ・ヒッグス統一理論(GHU)に関する研究成果として、“空間的インスタントン”と磁気単極子についての研究論文を学術雑誌に掲載するとともに、新しい研究テーマである、GHU の真空構造、また、このシナリオに基づくstrong CP problem の新たな解法に関する研究を開始した。 しかしながら、コロナ禍の影響、更には、本務先での役職に伴う多忙さもあり、当初予定していた程の研究活動は行えなかった様に思える。次年度は役職から退くこともあり、コロナ禍の終息は明確には見通せないものの、活発な研究活動を行いたいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、今年度開始したゲージ・ヒッグス統一理論(GHU)の真空構造に関する研究、更に、関連した研究として、このシナリオに基づくstrong CP problem の解法に関する研究を完成させたいと思う。 更に、18年度に発表したフェルミオン質量の階層的構造をGHUを用いて自然に説明する研究について、面白いアイデアではあるが、残されたいくつかの論点があるので、これらに関する研究を行いたいと思う。
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Causes of Carryover |
今年度は、本務校での役職により多忙であったこともあり、また、更に大きな要因として予期しなかったコロナ禍のため、当初予定して程には研究が進展せず、また、海外、国内を問わず出張が一切叶わなかった。 こうした事により、結果として次年度使用額が生じた次第である。 (使用計画)2021年度においては、役職も終了し、またコロナ禍の中ではあるが、その状況の好転を期待し、出張により共同研究者(大阪市大、等の研究者)と活発に研究討論し、研究結果を学術雑誌に掲載すると共に、その研究成果に関して出来る限り積極的に学術集会にて講演を行い、次年度使用額を有効に使わせて頂く予定である。
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Research Products
(1 results)