2021 Fiscal Year Research-status Report
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15K05062
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
林 青司 東京女子大学, 現代教養学部, 研究員 (80201870)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 標準模型の階層性問題 / 標準模型を超える理論 / ゲージ・ヒッグス統一理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
素粒子の標準模型は、ニュートリノ振動といった現象を説明できないものの、ほぼ全ての素粒子の現象を完璧に説明する、非常な成功を収めた理論であるが、この理論には、ヒッグス粒子にまつわる基本的かつ重要な理論的問題点がいくつか存在する。特に、「階層性問題」は、その解決への試みから、様々な「標準模型を超える理論」が生まれた事でも重要である。当該研究課題の研究では、そうした「標準模型を超える理論」の魅力的な候補として、高次元ゲージ理論の枠組みを用いて、ヒッグス粒子をゲージボソンの余剰次元成分と見なすゲージ・ヒッグス統一理論(GHU)に注目し、この理論の新展開をはかると共に、残されている、この理論の基本的な性質に関するいくつかの論点について議論し解決する事を主目的としている。 今年度の主な研究成果としては、昨年度から継続して研究を行って来た、強い相互作用の世界でのCP対称性の破れに関する深刻な問題である「strong CP problem」をGHU において自然に解決するシナリオについて、それを提唱する論文が完成したので、学術雑誌に投稿し、掲載が決定した事が挙げられる:Progress of Theoretical and Experimental Physics, ptac070, https://doi.org/10.1093/ptep/ptac070. この論文において、従来のstrong CP problem の解法とは質的に異なる解法が得られた。 残念ながら、海外への出張はコロナ禍の中で叶わなかったが、上記研究成果を、物理学会や、北海道大学でのセミナー(オンライン)にて口頭発表した。また、2021年度は、上記研究とも関連するものとして、QCDのθ真空によく似た構造を持つGHU の縮退した真空状態に関する研究も継続し、2022年度、その成果を論文として公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べた様に、今年度は、標準模型を超える理論としてのゲージ・ヒッグス統一理論(GHU)に関する研究成果として、strong CP problem(強い相互作用においてCP対称性が破れてしまうという深刻な問題)をGHUを用いて解決するシナリオを提唱する論文を発表し、学術雑誌への掲載が決定すると共に、その成果に関し、学会講演や他大学でのセミナー講演も行うことが出来た。また、GHU の真空構造に関しても議論を行い、最終的な結論を得ることが出来た。 コロナ禍の終息は明確には見通せないものの、そうした状況下としては、おおむね順調に研究は進展しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、まず、今年度末にその結論が得られた、ゲージ・ヒッグス統一理論(GHU)の真空構造に関する研究に関し、早急に論文として公表する事が挙げられる。 更に、これと密接に関連した研究として、このシナリオに基づく、宇宙初期における物質の生成(Baryogenesis)の理論構築の研究を推進したいと思う。既に予備的な研究を共同研究者と始めているが、最終的な結論を得たいと思う。 更に、可能であれば、18年度に発表したフェルミオン質量の階層的構造をGHUを用いて自然に説明する研究について、残されたいくつかの論点があるので、これらに関する研究を行いたいと思う。
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Causes of Carryover |
今年度は、オンラインによる学会講演、セミナー講演は行えたものの、コロナ禍のため、海外、国内を問わず対面による出張が一切叶わなかった。こうした事により、結果として次年度使用額が生じた次第である。 (使用計画) 2022年度においては、依然としてコロナ禍の中ではあるが、その状況の好転を期待し、出張により共同研究者(大阪公立大、松江高専、等の研究者)と活発に研究討論を行い、研究結果を学術雑誌に掲載すると共に、出来る限り積極的に(海外を含めた)学術集会に参加し、可能であれば講演を行い研究成果の宣伝に努めたい。次年度使用額を、こうした目的のために有効に使わせて頂く予定である。
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Research Products
(3 results)