2017 Fiscal Year Annual Research Report
Explication of new hadron states by lattice QCD
Project/Area Number |
15K05068
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
滑川 裕介 筑波大学, 数理物質系, 研究員 (00377946)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 計算物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、格子量子色力学に基づく数値シミュレーションによる新たなハドロン存在形態の解明である。ハドロン複合系において、単純な構成子クォーク模型では説明できない粒子の発見が複数の実験により報告されている。ただし、全ての新粒子の存在が確立しているわけではない。粒子の主要成分も不明な場合が多い。また、様々な理論的模型を用いた解析は為されているが、模型依存性が大きい。解析結果の正当性証明が大変困難である。本研究では、模型依存性の無い格子量子色力学シミュレーションにより、新たなハドロン存在形態を定量的に明らかにする。 本年度は、ハドロン2体系の解析に必要となる定式化およびシミュレーションによる検証を試みた。同じ量子数を持つハドロン2体と新粒子状態はエネルギー的に近傍に存在する場合が多い。両者を正確に分離する必要が有る。新粒子状態の解明にはハドロン2体の解析が必須である。本研究では、伝統的なルッシャーの有限体積公式と対になる定式化に注目した。2体の相互作用範囲外の波動関数を用いる伝統的手法と異なり、相互作用範囲内の波動関数を用いても散乱振幅を決定できた。得られた散乱振幅から散乱長を計算し、既存の手法で求められた結果との一致が確認できた。また、新方式は系統誤差をより正確に評価・抑制できることが判明した。加えて、半オフシェル散乱振幅計算に世界で初めて成功した。本研究により、従来の手法と相補的な見地が確立された点は意義深い。また、オンシェル散乱振幅だけでなく、実験的に評価できない半オフシェル散乱振幅が量子色力学から直接計算可能になった進歩は大きい。理論模型の精度改善にオンシェルだけでなく半オフシェルの情報も利用可能になった。本研究成果は格子量子色力学シミュレーションとして重要であるだけでなく、他の広範な理論模型の精密化に有益である。
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Research Products
(3 results)