2016 Fiscal Year Research-status Report
ブラックホール時空における波動光学効果とその観測的検証
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15K05073
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
南部 保貞 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (40212112)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ブラックホール時空での波動光学 / 重力レンズ / Regge pole |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ブラックホール時空上における波動光学の整備を試みている.ブラックホール時空上での Green 関数に対する部分波展開式を出発点とし,ブラックホー ル近傍に位置する波源から放出される波に対する散乱公式の導出を短波長領域において行なった.重力レンズ系としての散乱問題を定式化するためには,位相のずれを用いた標準的な散乱問題の扱いを多少拡張する必要がある.まず,観測点における波として入射波と散乱波の2つの重ね合わせを考える必要がある. また,短波長極限(アイコナール極限)にて重力レンズ方程式(測地線方程式に対応)を再現するために,散乱波の位相の観測点における漸近形を標準的な散乱理論の取扱いに比べて1次高い精度まで(O(1/r) まで) 取り入れておく必要がある.ブラックホール時空固有の性質である光の不安定円軌道の存在は,散乱行列の複素角運動量平面上での極として現れる(Regge pole).散乱波に対するその寄与は,留数計算を用いる事で評価できる.目標は観測点における波動関 数を与える公式の導出である. 本年度は回転パラメーターの値が小さい場合のKerr時空に対する解析を実行し,論文にまとめる作業に取り掛かっている. また,回転パラメーターの値が小さくない場合の数値的評価を試みた.
(2)本研究課題と関連する問題としてプラズマ流体でのacoustic black holeの解析を行った.アイコナール極限でのプラズマ波の振舞いを解析することでslow wave, fast waveによって決まる擬似ブラックホールの構造を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ研究計画通りである.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに進める.
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Causes of Carryover |
少額の繰越し金が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品等に使用する.
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