2016 Fiscal Year Research-status Report
数値相対論-磁気輻射流体コードの開発とショートガンマ線バースト中心動力源への応用
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15K05077
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木内 建太 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (40514196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 雄一郎 東邦大学, 理学部, 講師 (50531779)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 重力波 / 数値相対論 / 連星中性子星 |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカのAdvanced LIGOから2015年9月14日と12月26日に連星ブラックホール合体から放出される重力波を直接検出することに成功したという報告があった。ガリレオによる望遠鏡の発明に匹敵する発見と表現されるこの成功は重力波天文学の開闢を意味する。 このような状況を鑑みて本申請課題では連星中性子星およびブラックホール―中性子星合体に焦点を当てた研究を行っている。特に中性子星を少なくとも一つ含む場合、これらの連星合体はショートガンマ線バーストの中心動力源となりえるとともに、原子核物理の真の状態方程式および鉄より重い元素の起原に関する重要な知見をもたらすと考えられている。一方、連星合体の過程では高温・高密度・強磁場状態が実現されることが近年の研究により分かってきたため、その全容を解明するには数値相対論シミュレーションが必要不可欠となる。特に磁場、ニュートリノ輻射輸送を考えた場合、計算コストが大きくなるため効率的な数値コードの開発が必要である。本申請課題では次世代スーパーコンピューターの使用を見据え、連星合体過程の現実的描像を解明するためにコード開発を第一目標とする。今年度の進捗状況を以下に示す。 連星が合体するまでのインスパイラルとよばれるフェーズでは磁場、ニュートリノ輻射は本質的な役割を果たさない。そこで連星間距離が十分離れた状態から重力波放出により合体に至るまでを効率的に高精度で計算するAdaptive-Mesh-Refinementコードの開発を進めた。並列化および最適化の結果、合体までを既存のコードより10倍程度の速さで計算できるコードが完成した。続いて合体後は磁場、ニュートリノが本質的になる。そこで磁気乱流によって生み出される実行的な粘性を念頭に相対論的粘性ニュートリノ輻射流体コードの開発を行い、簡単なセットアップのもとでの計算結果を学術論文として投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インスパイラルを高精度の計算し、合体後の磁場・ニュートリノ輻射場込みの計算につなぐ手法を確立しつつあるとともに計算コードの開発も順調である。途中段階でのテスト計算に相当する内容の論文も投稿中であり、おおむね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、計算コードのさらなる開発を続ける。とくに重力波観測の成功を受け、連星中性子星合体からの重力波観測が数年以内に実現されるかもしれない。そこでインスパイラルから合体に至るまでの高精度重力波波形を利用したテンプレートの構築を本年度はコード開発と並行して進める。この部分のコードは完成しているため、確実な成果が見込める。 テンプレートをウェブを通じて公開し、重力波データ解析のグループに利用してもらうことを予定している。
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Causes of Carryover |
昨年度はコード開発に重点を置いたため、必要経費が見積もりより低くなった。また当初の予定では計算機の使用時間を購入する計画であったが、無償の新たな計算機システムの計算時間が割り当てられたことなどから昨年度に使用時間を購入する必要がなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は平成27, 28年度を通して進めてきた準備研究を成果として報告する計画である。学術論文として投稿するのに必要な投稿料として研究費を使用するとともに、研究成果を積極的に発信するために海外機関での長期的滞在を複数回予定している。 また同時に海外に動向をつかむために、当該分野での専門家を数人海外から招へいし、情報交換を行う予定である。今年度の研究費の一部は招聘研究者の渡航費および滞在費をカバーする予定である。
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Research Products
(14 results)