2015 Fiscal Year Research-status Report
平均場描像に基づいたクラスタ形成の普遍的法則から見た核分裂現象の微視的機構の解明
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15K05078
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市川 隆敏 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定研究員 (00370354)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | RPA法 / 深部サブバリア融合反応 / 平均場理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度に当たる平成27年度は、まず質量非対称な二体系での乱雑位相近似法による励起エネルギーの計算方法を確立するために、16O+208Pb系における励起モードの研究を行った。そしてお互いに離れた二つの原子核を近づけた時に、それぞれの核の励起モードがどのように変化するのかを調べた。 これを遂行するために平成27年度は、質量非対称な二体系でのRPA法の理論的な確立とコード開発を主に行った。二体系でのRPA法をまずは確立するために、最初から複雑なフルセルフコンシシテントな計算を行わずに、まずは仮定した平均場を用いて、二体系でのRPA法の基礎的な理論を確立することを目標とした。これらの成果を元に、励起状態を計算するコードを開発した。 完成したコードを用いて16O+208Pb系でお互いに近づいた時の励起モードを計算した。十分離れた遠方では、各々の原子核の第一3マイナス励起状態を正しく記述していることを確認した。そして二つの核をお互いに近づけた時に、互いの原子核の波動関数の混合によって、各々の3マイナス励起モードが減衰する事が分かった。 さらに調査の結果、このような減衰は、16O+208Pb系での深部サブバリア融合反応で観測されている融合阻害現象と関連がある事が分かった。そこでRPA計算によって明らかとなった遷移強度B(E3)の重心間距離依存性が、融合阻害現象をよく説明するチャネル結合計算で用いられる結合行列要素の減衰と深く相関することが分かった。つまり融合阻害現象は、互いに核が近づいた時に生じる量子振動状態の減衰が原因である事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り順調に進展している。まずは手で与えた平均場を用いて質量非対称な二体系でのRPA法の確立を行う事が出来た。与える平均場ポテンシャルは、二つの原子核を古典的な球形の密度分布を仮定して、その密度を湯川型ポテンシャルで畳み込んだ物を用いた。畳み込みポテンシャルを用いる事で、お互いに二つの原子核が近づいた時の平均場の変化を記述する事に成功した。また非物理的なゼロモードを除去する方法を開発し、二体系でのRPA計算の解の解析法などを確立する事が出来た。これらの方法はフルセルフコンシステントな計算でも必要不可欠な技術的課題を克服することができた。以上の進捗状況から、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、まずはセルフコンシステントで対称性を課さない回転系でのHatree-Fock計算を行うことができるコードを開発する必要がある。次年度はそれらのコードの開発を行う。完成したコードを用いて、基底状態でのクラスター状態の探索を行う予定である。またその励起状態の計算には、近年発展してきたRPA計算の計算コストが大幅に減少する、有限振幅法を用いたRPA法の使用を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は仕様に適したノートパソコンが発売されなかった。また、今年度は研究初年度ということがあり、成果が出ておらず、発表に適した海外国際会議に出席できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度に国際会議へ積極的に参加し発表を行う予定である。また、発表用のノートパソコンを購入予定である。これらに使用することにより、予算を消化することが可能である。
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