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2015 Fiscal Year Research-status Report

重力場中の光の湾曲における宇宙定数の寄与に関する研究

Research Project

Project/Area Number 15K05089
Research InstitutionNihon University

Principal Investigator

荒木田 英禎  日本大学, 工学部, 准教授 (80413970)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords光の曲がり / 宇宙定数 / ダークエネルギー
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的である重力場中における光の湾曲に対する宇宙定数Λの寄与という一般相対論および宇宙物理学における基礎的かつ根本的な問題を解決するために,本年度は宇宙定数Λを含む Schwarzschild-de Sitter 時空において,光の曲がりに対する宇宙定数Λの寄与を従来の測地線方程式を解く手法に代わりに,Synge の World-function を拡張した Time transfer function による計算手法を用いて考察した.
光の湾曲を始めとするこれまでの様々な検証では,時空が漸近的に平坦なミンコフスキー時空になるという事が理論的前提となって来た.しかし,近年目覚ましい精度向上を遂げている観測的宇宙論における様々な観測結果から,宇宙定数Λ/ダークエネルギーの存在が強く示唆されている.しかし,宇宙に宇宙定数Λ/ダークエネルギーがあると.時空は一般に漸近的平坦にはならず,ユークリッド幾何学的な視点で光の曲がり角を論ずることができない.
これまでの光の曲がりに対する宇宙定数Λの寄与に関する研究では,Schwarzschild-de Sitter 時空における光の曲がりにおいて,宇宙定数Λが光の曲がりに寄与しない,宇宙定数は中心天体の質量 M と結びついた形で寄与する,または宇宙定数は中心天体の質量 M とは結びつかない形で寄与するなど,その結論は様々であった.
今回,我々は Time transfer function を用いた計算手法によって,宇宙定数Λは光の曲がりに寄与し,かつ,その主要項は中心天体の質量 M とは結びつかない形で現れることを示した.今回の Time transfer function による計算では,メトリックテンソルを直接積分する形となり,メトリックテンソル自体にΛが現れるために,結果として宇宙定数が光の曲がりに寄与する事が示された.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度は,先に記述したように,Time transfer function を用いた計算手法により,宇宙定数Λは光の曲がりに寄与し,かつ,その主要項は中心天体の質量 M とは結びつかない形で現れることを示した.
また,本研究の計画に含まれている,漸近的に平坦にならない時空での光の曲がり角の定義および理論と観測量との関係を明確にするための取り組みとして,本年度は本来区別されるべき Minkowski,Schwarzschild,de Sitter,Schwarzschild-de Sitter/Kottler の各時空で,運動の積分をきちんと区別することが重要かつ必要であることを示した.本年度はこの成果に基づいて,球対称,軸対称性を仮定して,漸近的に平坦ではない時空における光の曲がり角の定義と解釈を与えるところまで進む予定であったが,そこまで至らなかったものの,積分定数の場合分けの必要性を明らかにした事で道筋を付けることができた.
また,宇宙定数Λの寄与や観測可能性を調べる上で,重力レンズ効果などの複数の光線の考察や,Optical scalars とよばれる量を評価し,Ricci focusing,Weyl focusing による光線束の変形を調べることで,宇宙定数Λの光の曲がりへの寄与を別の視点から考察できる可能性があることを示すことが出来た.

Strategy for Future Research Activity

今後の研究の推進方法としては,本年度積み残した漸近的に平坦にならない時空における曲がり角の定義を明確にして,理論と観測量との対応を明確に示すことを目指す.
さらに,Schwarzschild-de Sitter 時空における重力レンズ現象を Optical scalars を導入して,Ricci focusing,Weyl focusing による光線束の変形を調べる事で,重力レンズ効果の観測から宇宙定数Λの寄与の検証が可能か考察を進める.また,重力レンズ効果では複数の経路を光が通ってやってくるため,この複数の経路の考察することで宇宙定数Λの寄与を検証できるかについても追求する.
さらに,回転する天体の時空を表す Kerr 解に対して宇宙定数Λを取り込んだ形の Kerr-de Sitter 時空における宇宙定数Λの光の曲がりを論ずる.まず始めに,1階のヌル測地線方程式を出発点として,Kerr-de Sitter 時空における光の湾曲に対する宇宙定数の寄与を考察し,単なる光の曲がりのみならず,重力レンズ効果やブラックホール・シャドーを用いた場合に宇宙定数Λの存在の実証が可能かを探る.ついで,本年度と同様にヌル測地線方程式を用いない方法として,Time transfer function を用いた方法を用いて Kerr-de Sitter 時空による光の曲がりを評価し,別な計算手法の視点から宇宙定数の寄与を考察していく.

Causes of Carryover

本年度は当初の計画では,理論懇シンポジウム参加のための研究出張,およびブラックホール地平面勉強会参加の研究出張を予定していた.しかし,12月の理論懇シンポジウムと授業日実施日が重なってしまったこと,および,土曜日のブラックホール地平面勉強会と学内用務が重なってしまったことなどにより,予定の出張を行うことが出来ず,結果として旅費を当初の計画通り執行出来なかったため,本年度に次年度使用額が生じた.

Expenditure Plan for Carryover Budget

平成28年度は,日本天文学会年会が秋に愛媛大学,春に九州大学で開催され,日本物理学会も秋に宮崎大学で開催と,参加予定の学会が遠方開催となるため,平成27年度の次年度使用額は,これら学会出張のための国内旅費として使用する計画である.

  • Research Products

    (2 results)

All 2016

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results,  Acknowledgement Compliant: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Effect of the cosmological constant on light deflection: time transfer function approach2016

    • Author(s)
      H. Arakida
    • Journal Title

      Universe special issue 100 Years of Chronogeometrodynamics: the Status of the Einstein's Theory of Gravitation in Its Centennial Year

      Volume: 2 Pages: No.5

    • DOI

      10.3390/universe2010005

    • Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
  • [Presentation] 宇宙定数Λによる光の曲がりに関する諸問題の検討2016

    • Author(s)
      荒木田英禎
    • Organizer
      日本天文学会2016年春季年会
    • Place of Presentation
      首都大学東京南大沢キャンパス
    • Year and Date
      2016-03-14 – 2016-03-17

URL: 

Published: 2017-01-06  

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