2015 Fiscal Year Research-status Report
宇宙線と星間ガスや大気の相互作用終状態を広帯域で再現するシミュレータの開発
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15K05098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
釜江 常好 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (90011618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奈良 寧 国際教養大学, 国際教養学部, 教授 (70453008)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 宇宙ガンマ線 / 宇宙電子・陽子線 / 宇宙線ミューオン / 宇宙線空気シャワー |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)核子当りの実験室系での運動エネルギーが5TeVまで、以下の入射核種と標的核種の組み合わせで発生するガンマ、ミューオン、電子、ニュートリノのスペクトルを、奈良のJAM-1.342コードで計算し、実験・観測結果と照合した。入射核種:p, He, C, N, O, Ne, Mg, Si, Fe 標的核種:H, He, C, N (2)ガンマ線スペクトルを、中性パイ、イータ、その他経由に分けて予言。(2015年9月にトリノで開かれたFermiLATグループ会合で発表:非公開) (3)反応はバリオン共鳴とLundストリングで近似し、他モデルと比較した。 (4)フェルミ宇宙ガンマ線望遠鏡(FermiLAT)が観測した、宇宙線が大気上層部で起こす相互作用で生まれるガンマ線スペクトルを、計算で再現したその結果、FermiLATの衛星軌道の高度により、ガンマ線到来方向分布が変動することを発見し、補正方法を提案した。(2016年3月にSLACで開かれたFermiLATグループ会合で発表:非公開) (5)計算結果にミューオンや、その崩壊で発生する電子・陽電子とニュートリノを追跡プログラムに追加した。その結果、ミューオンが、大気上部をほぼ水平に数1000km程度まで飛んだ後に崩壊する事象があることが判明した。このことは、FermiLATの電子・陽電子の宇宙線スペクトルに、ミューオン経由のものが混ざっている可能性を示唆する。(FermiLATの会合で発表:非公開。 (6)JAMに量子分子動力学(quantum molecular dynamics)の枠組みを用いて、核子の平均場を取り入れた。この改良により、核子当たりの入射エネルギーが20GeV(ラボ系)までの原子核反応の記述が改善された。また、平均場により、核子間が結合する効果が入るので、反応で生成されるハドロンだけでなく、原子核クラスターも含まれるが、その励起状態の崩壊も行えるようにした。 (7)平均場を導入すると計算時間が10倍必要となるので、ビデオカードを追加しGPUとして高速化した。JAMの一部をGPU用のCuda言語で書き換えることで、10倍速く計算できるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究のかなりの部分は、FermiLATグループのデータを使うため、グループ全体の了承が得られないと論文発表ができない。それゆえに、論文発表が遅れているが、研究は、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)FermiLATの観測データを使う部分は、同グループ内の関係者を共著者として入ってもらう形で、成果を論文として発表したい。2015年度に行った、 2)2015年度は、FermiLATの高度から観測した宇宙線と大気の相互作用は、宇宙線と星間ガスの相互作用など、一回しか反応が起きない場合に限定してきたが、宇宙線の空気シャワーをシミュレートするには、数回から10数回の相互作用を追う必要がある。その準備をしたい。3)は、その一環である。 3)JAMの核子ー核子散乱の断面積を新たにフィットし直した上で、JAMをC++であらたに書き直す。 このようにすることで、最新のPythia8(ミニマム・バイアス版)とJAMを結合することが可能になり、低エネルギーから高エネルギーまで、最新の実験で校正されたシミュレーションが完成できる。 4)最終年度には、新しいJAM+Pythia8で、宇宙線の空気シャワーのシミュレーションに取り組みたい。
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