2016 Fiscal Year Research-status Report
大深度地下実験室における中性子束の長期測定及び稀事象探索に与える影響の定量評価
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15K05100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹田 敦 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (40401286)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 暗黒物質探索実験 / 中性子バックグラウンド / 中性子検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は主に以下の研究を行った。 (1)中性子検出器の性能評価: 中性子検出器に、ガンマ線源であるコバルト60、中性子線源であるカリフォルニウム252、イットリウム/ベリリウムを照射して、検出器の性能評価を行った。中性子検出器は、約1.5リットルの液体シンチレータ(BC-501A)と2本の2インチ光電子増増管(PMT)からなり、2本のPMTからの信号はサンプリングレート1GHzのフラッシュADC(FADC)によって波形情報が記録される。コバルト60によるガンマ線事象と中性子線源による中性子班跳事象が、FADCで取得した波形データからどの程度弁別されるかの研究を行った。 (2)モンテカルロシミュレーションを用いた、中性子が暗黒物質探索検出器に与える影響の評価: 液体キセノンシンチレータを用いた暗黒物質探索検出器においては光検出器として特別に開発された低バックグラウンド仕様のPMTが用いられる事が多いが、PMT内にわずかに残っている放射性不純物のU/Th系列から出されるアルファ線が(α,n)反応によって生成する中性子の影響の評価が重要となる。そこで、暗黒物質探索検出器としてXMASS検出器を想定し、XMASS検出器で使用されている2インチPMT(HAMAMATSU R10789)内の放射性不純物から生成される中性子の影響を詳細に見積もった。この結果は、日本物理学会第72回年次大会にて報告された。 また、宇宙線ミューオン起源の中性子や水シールドの外部を取り巻く岩石中の放射性不純物からのアルファが(α,n)反応を起こして生成される中性子による影響についても詳細な評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標である、中性子検出器セットアップを完成させて、検出器の性能評価を行い、環境中性子のフラックス測定を開始することができた。 また、シミュレーションによって、さまざまな種類の環境中性子(検出器部材中に含まれる放射性不純物、特にU/Th系列のアルファ線が(α,n)反応によって生成する中性子も含む)が暗黒物質探索実験に及ぼす影響を詳細に評価することができた。特にシミュレーションでは、PMTに含まれる放射性不純物をゲルマニウム検出器、ICP-MS、GDMS等による実測値をもとに(α,n)シミュレータSOURCES-4A (NIM A 595 (2008) 431-438)を用いて発生する中性子のエネルギースペクトラムを各部材ごとに求め、Geant4 ベースのシミュレータを用いて求めた中性子のスペクトラムをPMTの各部材の位置から発生させることで暗黒物質探索実験に及ぼす影響を、目標通り評価することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
性能評価が遂行された中性子検出器を用いて、暗黒物質探索が行われている神岡地下実験室にて環境中性子フラックスの連続測定を行う。その際に、水シールドによる中性子フラックスの低減効果についても評価を行う。 一方で、シミュレーションを用いて、測定された中性子束の起源の理解と、暗黒物質探索実験に及ぼす影響の評価をさらに高精度に行う。また、中性子検出器自身の感度改良のために、中性子検出器部材の表面アルファ事象の影響の評価や表面バックグランドの除去・低減に関する研究をすすめる。
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