2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05101
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
仁木 秀明 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00135758)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | レーザー同位体分離 / カルシウム / 二重ベータ崩壊 / 輻射圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノのマヨラナ粒子性の検証のために、世界各国で二重ベータ崩壊実験研究が行われている。二重ベータ崩壊核種のうちでCa-48は、崩壊エネルギーが大きいためバックグラウンドノイズの影響を受けにくいとされているが、同位体の天然存在比が0.187%と小さいためその濃縮が期待されている。本研究では、Ca原子ビームにレーザーを照射することにより特定の同位体のみを偏向させ、原子ビームから取り出す方法に着目し、実験的研究を進めた。 Ca原子ビームの発生:Caをヒータ加熱により550℃に加熱し蒸発させたのち、直径1mmのアパーチャを2枚設置することにより、垂直方向に原子ビームを形成した。原子ビームの広がり角は、以下に記す方法による原子分布の測定と、加熱温度から推測される原子ビームの速度から4.7mradと見積もられた。 原子密度分布の測定:原子ビーム上方でパルス発振Nd:YAGレーザーの第2高調波照射によるイオン化と飛行時間式質量分析を組み合わせ、YAGレーザーの照射位置を変化させることで各同位体の水平方向の分布をモニターできるようにした。 原子ビーム偏向実験:波長422nm近傍で発振するcw半導体レーザーをCa-40の吸収波長に性格に同調し、原子ビーム全体に照射し、Ca-40の水平方向の分布を調べた。半導体レーザー光の照射時、遮断時に、原子ビームの片側ではCa-40の減少し、反対側で増加する様子が確認できた。この分布の変化を詳細に解析することにより、Ca-40のビームが3.75mrad偏向されたと見積もられた。Ca-40については、特に変化は見られなかった。このことは、この手法によって、特定の同位体が選択的に偏向させることができることを示している。また、原子ビームの広がり角はさらに小さくするか、半導体レーザーの照射条件を工夫することで高い濃度で同位体が回収できると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実施計画では①レーザー照射によるCa原子の偏向実験および②同位体分離実験の2つを掲げていた。そのために、半導体レーザーの準備、同位体分析系の整備が必要であったがすべて順調に準備でき、特に半導体レーザーに関しては、新たに出力の大きい装置を導入することにより実験が容易となった。①の項目についてはクリアでき、②についても偏向の同位体選択性が確認された。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、①Ca原子の偏向実験、および②同位体分離実験は引き続き行い、レーザー照射による原子ビームの偏向特性並びに同位体選択性について知見を深め、分離装置の概念設計のための基礎データとする。具体的には、以下の計画に従う。 ①Ca原子の偏向実験:偏向用半導体レーザーの照射条件(原子ビーム方向の照射幅、パワー密度等)による偏向の度合いを明らかにし、最適な照射条件を検討する。この測定を行うために質量分析に加えて、吸収スペクトルのドップラーシフトを測定する方法も新たに試みる。 ②同位体分離実験:予想が示す通り、同位体の選択性が高いことを実験的に明確に示す。 上の①、②に加えて、大量分離を考えたときに考慮しなければならない問題についても検討する。
|
Research Products
(6 results)