2015 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッド化による大口径高感度の新型光検出器の開発
Project/Area Number |
15K05110
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
足立 一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (00249898)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 光検出器 / シングルフォトン / ハイブリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ハイブリッド技術を用いることでシングルフォトンに高感度を持った大口径の新型光検出器を開発することである。光センサーにはMPPCを用い、真空管技術を応用して小面積センサーであるMPPCを、大きな面積にまで高い検出効率をもつ全く新しいセンサーとして使用可能にするものである。 平成27年度の実績として、まず小型のハイブリッド型PMTの製造を浜松ホトニクスにて行い、その性能評価を行った。シングルフォトンに対しての応答については、良好な性能を得た。このことから、ハイブリッド化したことで、大口径化してもシングルフォトンに感度があることが実証できた。これによって今後の大型化への第一ステップを達成できたと考える。ハイブリッド化に関しての詳細な技術的な側面についても、フォトカソード作成のための活性化プロセスや、それがMPPC性能に与える影響など製造上の基本的な点について、今回の小型化サンプルを用いて調べることができたことは大きな意義である。これにより潜在的な問題は概ね解決できるという目処がたったということができる。 また、真空管内部の電場についても、今後の改良の余地はあるが、コンセプトとしては、正しく動作し、フォトカソードで生成された光電子がMPPCへ信号を残したということで、検証ができた。 さらに、今回の実験で、信号読出し装置を含む周辺機器の整備が進んだことが挙げられる。特に読出し電子回路の制御等は、今後の実験に十分に適応できることが判明した。これらの点も、今年度の大きな実績の一つである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小型化サンプルを実際に試作し、製造上の問題点を検証できたこと及びシングルフォトンの信号が確認できたことは、計画の中心的課題が順調に進行していることを示すものである。特に、製造上の問題は、場合によっては、浜松ホトニクスの製造装置の改良などが必要な可能性もあった。今回の試験結果によって、それが回避できるということは、今後の大型化に向けた製造について大きな障壁がない。これは非常に重要なことである。同時に、シングルフォトン信号検出の点においては、今後は性能向上にむけた改良を中心に推進すれば良いことが判明した。この二つの点からは、当初の計画以上に進行しているということが言える。 一方、潜在的な問題点としては安定な動作の確認である。試作サンプルでは、一カ月程度連続運転し動作試験していない。したがって、長期安定性については、試験項目として残っている。ただし、安定性については、たとえ問題が発生しても、MPPCのシリコンに関する構造や表面膜の追加など、今まで培われた技術が有効と思われる。よって、近未来にはおそらく達成可能と予測しているが、実証という点では遅れている項目である。 その他の点について、計測機器や実験周辺機器の整備については順調に進んでおり、昨年度の試験から問題なく動作し、今後もこれらの装置を使用し試験を連続的に行えるという点では、問題ないと言える。また、浜松ホトニクスとの協力体制について、昨年度に行ってきた技術的打合せやメールによる情報交換が有効に機能することがわかった。人的資源についても、研究代表者が中心に行えることで、今後の研究をさらに展開していくことが可能であることも明らかにできた。以上の点から、総合的に判断したものが、上記の評価である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進について、中心的課題は試作サンプルの大型化である。当初の目的である数センチの直径まで真空管を大きくし試作を実施する。真空管容量が大きくなることで不純物の混入等の可能性を考慮し、真空引きについては、今までの経験から長時間実施するなどの検討を十分事前に行う。フォトカソード生成のための活性化については、前年度と同様で良いが、さらに高い量子効率を得られる可能性を追求する。この点、今後の浜松ホトニクスとの打合せの中で順次決定し、実行していく予定である。製造後は、シングルフォトン検出効率を測定し、新しい試作機の評価を行う。その後、試作評価からのフィードを加えて製造方法に改良し、 試作をもう一度実施する予定である。この試作品も同様な性能評価を実施する。複数サンプル製造し、それらから得られる結果のばらつきから製造の安定度も評価できると考える。一方、試作の結果によっては、MPPCの仕様変更などの対応が必要な場合もある。この点は常に考慮をして試験結果を評価する。 並行して、小型サンプルの長期安定試験を行う。これは、サンプルにシングルフォトンより強い光を照射し、加速試験として実施する。出力信号を常時モニターし、その安定度を測定する。また、適宜シングルフォトンについての応答を確認し、検出効率に劣化がないかを確認する。これらの試験を一カ月程度連続して行うことで、安定性についての結果を得る予定である。 その他、総合試験に向けて、実験セットアップを組みあげるためのサポートシステムなどに設計を行うなど、最終年度の試験への準備を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
光検出器の長期安定性試験について最終的な結果がでておらず、新サンプル購入などを控え、評価を最優先にしたため、そのための執行の残りとして発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の最優先課題として長期安定性試験を取り組み、評価を決定する。さらに、今後の製造計画について、早めに準備し、最終的には今年度中に解決するように進める予定である。
|