2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study of production mechanism of positron and neutrons in lightning and thunderclouds
Project/Area Number |
15K05115
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
土屋 晴文 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 客員研究員 (70415230)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光核反応 / 粒子加速 / 制動放射ガンマ線 / 即発ガンマ線 / 放射性同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの日本海沿岸における観測により、雷や雷雲の中で電子が相対論的なエネルギーに加速され、10 MeVを越える制動放射ガンマ線を放射していることを確実なものとした。近年、そうしたガンマ線の他に、中性子と思われる信号や雷の後に遅れて観測される511 keVの対消滅線も我々の観測や世界の他のグループにより発見されていた。しかしながら、ガンマ線が観測される事象に比べると、中性子や対消滅線が観測された例はまだ少ないため、それらの発生メカニズムにはなぞが多かった。 そうした状況の中、2017年2月に柏崎刈羽原子力発電所から沖合1 km ほどで発生した雷に伴い、100 ms ほど続く強烈なガンマ線が観測されるとともに、雷の発生から数十秒ほど遅れて511 keVの対消滅線も観測された。 観測された事象を統一的に理解するため、構内に設置した我々の4台の装置のデータを詳細に解析するとともに、ガンマ線や中性子、陽電子の大気伝播や検出器応答を含むモンテカルロシミュレーションを実施した。その結果、以下のように雷が光核反応を引き起こしたという描像を得た。 まず、雷で発生した強烈な制動放射ガンマ線が大気中の窒素と光核反応を起こし、高速中性子を生成した。高速中性子は大気中で散乱を繰り返すことで熱エネルギー付近にまで減速された後、大気の窒素原子核に捕獲され、即発ガンマ線をはなつ。この即発ガンマ線が検出器で100 ms ほどにわたり観測された。また、窒素との光核反応では窒素の不安定同位体であるN13も生成される。N13は半減期約10 分でベータプラス崩壊し、陽電子を放出する。この陽電子に由来する511 keVが雷の後、数十秒間にわたり我々の装置で観測された。以上により、中性子や陽電子の発生は雷が引き起こす光核反応に由来することを世界で初めて明かした。
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Research Products
(9 results)