2016 Fiscal Year Research-status Report
ディラック電子系に対する量子ドット導入による熱電性能の増強
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15K05120
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
青野 友祐 茨城大学, 工学部, 准教授 (20322662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小峰 啓史 茨城大学, 工学部, 准教授 (90361287)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 熱電効果 / 量子微細構造 / 界面効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の中心課題となる、質量のないディラック電子系中の量子ドット構造における熱電特性について議論を行った。質量のないディラック電子系を電極とする量子ドット系においては、量子ドットと電極のトンネル結合が、ディラック電子の状態密度を反映した擬ギャップ構造を持つ。このため、量子ドットの局所状態密度に鋭いピーク構造が生じ、熱電特性が通常半導体中の量子ドットと比べて大きく異なることを示した。まず、熱電性能指数とゼーベック係数の最大値は、温度によらずに一定値となることがわかった。性能指数の最大値は1よりもずっと大きく、ゼーベック係数も500マイクロボルト/K程度の大きな値をとり、優れた熱電特性を示すことがわかった。これらの結果は、通常の量子ドット系においては、低温になるにつれて熱電特性が悪くなることと対照的である。ディラック電子のフェルミエネルギーがディラック点から離れた場合についても、フェルミエネルギーとディラック点のエネルギー差よりも大きな温度領域では、上記の熱電特性が保たれることがわかった。 石英テンプレート内に封入されたビスマスナノワイヤでのホール効果について議論を行った。封入されたビスマスナノワイヤ表面の側面に電極を取り付けることによりホール測定を行うことがはじめて可能となった。その結果、ワイヤ中の電子およびホールのホール移動度は、バルク結晶のときよりも低くなり、低温ではその違いが顕著になることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディラック電子系における熱電効果について解明することを目的としているが、平成28年度は予定していた研究計画についてすべて着手して、成果を上げることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、研究課題が計画通り進展したことから、今後も研究計画に基づき研究を遂行する。ビスマス系薄膜における電子状態や熱電特性の解析を進めていき、量子ドット構造における熱電特性の解析をひきつづき進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
旅費に予定していた一部が次年度に繰越となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として研究打ち合わせや学会発表のための旅費や計算機環境の補強のために使用していく予定である。
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