2016 Fiscal Year Research-status Report
強相関電子系の相転移近傍における特異な光励起状態に関する研究
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15K05122
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| Research Institution | Chiba University |
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Principal Investigator |
三野 弘文 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (40323430)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 光励起状態 / 強相関電子系 / ポンプ・プローブ分光 / 偏光変調分光 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
強相関電子系の相転移近傍に見られる特異な光励起状態について調べるため、広波長領域で高感度スペクトル計測ができるマルチチャンネル差分積算分光システムを構築した。本システムでは、励起レーザー光と白色光の強度を時間変調し、光励起で誘起されるスペクトル変化を差分スペクトルの時間積算で極限までノイズを減らした計測を可能とする。白色光源としてENERGETIQ 社製 LDLS 白色光源（Laser-Driven Light Source）を使用し、超電導マグネットクライオスタット等を併用して、極低温（1.5 K）～室温、最大７T の磁場印加下での測定を実現させた。スペクトル計測においては強度のみでなく、偏光についても変調計測可能なシステムの開発を行い、分光器、CCD、LCVR（液晶可変リターダ） をLabVIEW制御するプログラムの作製により、LCVR の印加電圧を変化させ、右回り偏光と左回り偏光の差を差分スペクトル測定として検出できる機能も確立した。磁性半導体CdTe/CdMnTe量子井戸を対象とした磁気分光計測で構築したシステムの性能評価を行った。有機系も含めた強相関電子系を対象とした光誘起、磁場印可下でのスペクトル変化の観測を行い、数種類の試料において光励起状態の詳細を明らかにする実験結果の蓄積を行っている。また、本研究の主要な目的の一つである、有機 Mott 絶縁体 β'(BEDT-TTF)(TCNQ)結晶の光励起状態については、その空間応答を数マイクロメートルに集光したポンプ光スポットをサンプル表面で走査させる顕微ポンプ・プローブイメージング測定で調べた結果、反強磁性転移温度近傍で光励起状態の空間拡がりが増大することを明らかにした。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度で構築したマルチチャンネル差分積算分光システムは、光誘起スペクトル変化システムと偏光変調計測システムの２種類からなる。前者はレーザー光照射によって生じるスペクトル変化を高感度で計測するもので、励起レーザー光、スペクトル検出用白色光源、CCD検出器付き分光器等の機器制御で、有機 Mott 絶縁体 β'(BEDT-TTF)(TCNQ)結晶の光励起状態のスペクトル変化の高感度計測が可能であることを示した。後者は分光器、CCD、LCVR（液晶可変リターダ） を制御して右回り偏光と左回り偏光の差を差分スペクトル測定として検出するが、このシステムの測定精度の評価や、パラメータの最適化を磁性半導体CdTe/CdMnTe量子井戸に磁場を印可した状態での巨大ゼーマン分裂の観測をベースとして行った。その結果、高温で微弱となる偏光度スペクトル計測についても、CCD検出時間の最適化、宇宙線の除去、データ解析プログラムの併用などから、高感度な計測が可能であることを実証した。磁性半導体CdTe/CdMnTe量子井戸における実験では光誘起カー回転計測の結果も合わせて、ヘビーホール励起子とライトホール励起子両方のゼーマン分裂、スピンダイナミクスの詳細について明らかにした。
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| Strategy for Future Research Activity |
平成27年度で構築し、平成28年度で性能評価を終えたマルチチャンネル差分積算分光システムを使用して、有機 Mott 絶縁体 β'(BEDT-TTF)(TCNQ)結晶、磁性半導体CdTe/CdMnTe量子井戸を対象とした研究を進めるとともに、三角格子反強磁性体結晶等、他の系においても研究を行い、反強磁性転移やモット転移など相転移近傍で見られる光励起状態についてスペクトル変化から詳細を明らかにし、電子系の違いによる特徴や、共通点について知見を得る。有機 Mott 絶縁体 β'(BEDT-TTF)(TCNQ)結晶では空間分解ポンプ・プローブ計測を行い、反強磁性転移近傍で光励起状態の顕著な空間拡がりを観測しており、空間応答からも特異な光励起状態について調べる事が可能である。他の物質系においても同様の実験を遂行し、光励起下でのスペクトル変化と空間応答の観測から、相転移近傍における光励起状態の詳細を明らかにする。更には、偏光変調システムによるスペクトル変化、光誘起カー回転計測についても研究を進め、上記の光励起状態におけるスピン状態についても調査し、磁性転移と光励起状態のスピンの関わりについて知見を得る。
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| Causes of Carryover |
当初の見積もりよりわずかに（12,256円）使用金額が少なく済んだため。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成２９年度の物品費に加える。
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Research Products
(5 results)
