2016 Fiscal Year Research-status Report
新規強誘電体の高圧合成と熱測定による構造不均一性の評価
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15K05137
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
橘 信 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (40442727)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高圧合成 / 結晶成長 / 熱物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ベルト型プレスを用いた超高圧合成法や、結晶成長条件を精密にコントロールしたフラックス法により、新規な酸化物誘電体を合成することを目標とする。また、熱物性を中心とした物性測定を行い、特異な物性の起源を明らかにする。 当該年度は、主にパイロクロア型の結晶構造をもった新規な磁性誘電体の合成を超高圧下で行い、それらの結晶構造や磁気構造の解析と物性測定を行った。まず、有効磁気モーメントS=1/2をもつYb2Ge2O7の合成を行い、この物質ではXY型の反強磁性基底状態を示すことを明らかにした。また、精密な中性子磁気散乱を調べ、同じ結晶構造をもつYb2Sn2O7およびYb2Ti2O7との比較を行った、この結果、Yb2Sn2O7とYb2Ti2O7は低温で強磁性的な振る舞いを示し、一方、Yb2Ge2O7は反強磁性的な振る舞いを示すが、これら3つの物質の磁気散乱スペクトルはどれも共通でエキゾチックな振る舞いを示すことを明らかにした。さらに、高圧合成でGd2Pt2O7の良質試料を作製し、μSR、磁化率、および比熱測定からこの物質は1.6 Kで反強磁性転移を示すことを明らかにした。この転移温度は他のGd系パイロクロアと比べて異常に高く、この結果からGd-Pt間の相互作用が重要であることを明らかにした。 当該年度ではさらに、パイロクロア型のTb2Ti2O7の精密熱膨張率測定を行い、その特異な熱膨張率の振る舞いの起源を明らかにした。また、リラクサー強誘電体Pb(Mg1/3Nb2/3)O3のラマン散乱を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な目的の一つは、ベルト型プレスを用いた超高圧合成法により、新規な酸化物誘電体を合成することである。当該年度ではパイロクロア型の結晶構造をもつ多くの酸化物の合成に成功し、さらにそれらの特異な物性を明らかにすることを成功した。これらの結果は学術論文としてまとめられ、2016年度だけでもPhysical Review B誌から3報出した(その内、Rapid Communication1報)。これらの論文はそれぞれすでに複数回引用されており、今後も多数回引用される勢いである。現在は当該年度に得られた結果を元に、さらに数報の論文を準備中である。 本研究のもう一つの主な目的は、誘電体や強誘電体の物性について、主に熱測定のアプローチから明らかにすることである。当該年度では鉛系および非鉛系のリラクサー強誘電体の単結晶について、それらの比熱、熱伝導率、および熱膨張率の精密測定を行った。また、同様なアプローチは磁性イオンを含む誘電体単結晶についても行うことが可能であり、パイロクロア型の結晶構造をもつTb2Ti2O7の良質な単結晶をフラックス法によって育成し、その比熱、熱伝導率、および熱膨張率の精密測定を行った。この研究から面白い結果が得られ、これはすでに2016年度に学術論文として報告している。 したがって、本研究はおおむね順調に進展していると考えてよいと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで本研究は順調に進んでいるので、基本的にはこのまま遂行していけばよいと考えている。ただし、良質な単結晶の育成は、精密物性測定を行い、その実験結果を解釈する上で大きな前提となるので、これまで以上に努力する必要があると考えている。特に、単結晶をcharacterizeする上で、物性測定の結果だけから結晶の質を判断するのにはいろいろな危険が潜んでいるため、例えばX線トポグラフを用いた分析実験により、結晶中に含まれる欠陥の数や種類について明らかにする必要があると考えている。 したがって、今後の研究の推進方策としては、基本的には研究計画調書で述べたように進めるが、フラックス法で育成した単結晶のcharacterization については、さらに精密な実験を行う。これは特にリラクサー強誘電体など金属イオンの非常に複雑なdisorderを含む結晶では重要である。
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Causes of Carryover |
当初、2016年度に白金ルツボの改鋳のために本研究予算から50万円程度を使うことを計画していましたが、白金ルツボの仕様状況から、2017年度に改鋳したほうがよいと判断したため、555,522円を次年度使用額としました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額555,522円は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、白金ルツボの改鋳代、および粉末試薬や試料合成に必要な消耗品や育成した結晶を評価するための機材の購入代として使用する予定です。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] XY antiferromagnetic ground state in the effective S=1/2 pyrochlore Yb2Ge2O72016
Author(s)
A. M. Hallas, J. Gaudet, M. N. Wilson, T. J. Munsie, A. A. Aczel, M. B. Stone, R. S. Freitas, A. M. Arevalo-Lopez, J. P. Attfield, M. Tachibana, C. R. Wiebe, G. M. Luke, B. D. Gaulin
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Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 93
Pages: 104405-1-7
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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