2016 Fiscal Year Research-status Report
量子ビームを用いた巨大応答ナノドメインの階層的空間・時間相関の研究
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15K05139
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
久保田 正人 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 物質科学研究センター, 研究副主幹 (10370074)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では、有機太陽電池薄膜の局所的な電子状態や構造が機能性に及ぼす影響を明らかにした。 有機太陽電池薄膜試料として、クロロホルムサンプルとジクロロベンゼンサンプルを用いた。これらのサンプルの可視・紫外分光測定により、ジクロロベンゼンサンプルの吸収強度のスペクトルがレッドシフトを示すことが分かった。 放射光実験により、θ-2θスキャンプロファイルを比較すると、ジクロロベンゼンサンプルの方がピーク位置が高角側に出現し、線幅が狭いことが明らかになった。このことは、ジクロロベンゼンサンプル内のP3HT分子鎖間の長さは、クロロホルムサンプルのP3HT分子鎖間よりも短く、格子定数の分布は、ジクロロベンゼンサンプルはクロロホルムサンプルよりも小さいことを意味する。P3HT分子鎖間の距離が約17 Åよりも短くなると構造だけでなく電子状態も大きな変化が生じることを明らかにした。P3HTは、c軸方向に連なるチオフェン環(main chain)を有し、a軸方向にside chainが伸びている。 P3HTの特徴的な分子構造では、a軸方向の結合が強くなると、 P3HTのchain方向の結合も強くなると考えられる。太陽電池性能を考慮すると、ジクロロベンゼンサンプルのP3HT分子内でチオフェン環の整列化やパッキングの発達が示唆される。 更に、両サンプルでは、硫黄の非共鳴エネルギー位置と共鳴エネルギー位置のスペクトル強度差が大きく異なり、局所的な硫黄サイト周辺の電子状態が異なっていることが示唆された。このことは、P3HT内の硫黄サイト周辺の2重共鳴状態の安定化度の相違が要因として考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に進展しているので、継続していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
有機物材料以外にも、酸化物材料における局所的な電子状態や構造が機能に与える影響について、中性子や放射光を用いて解明していく予定である。
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Causes of Carryover |
重要会合と日程が重なり、情報収集のため出張が困難であったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は研究課題の最終年度なので、研究を総括する上で必要な情報収集などに充当する予定でいる。
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Research Products
(3 results)