2015 Fiscal Year Research-status Report
マグノン超流動の観測に向けた微小試料熱伝導およびマグノン流測定デバイスの開発
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15K05147
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小野 俊雄 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40332639)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 微小電気機械システム / 熱伝導 / 量子輸送 / 量子相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である微小試料に対応した熱伝導測定装置の開発に向けて、温度計素子として用いる半導体薄膜の作成条件を探った。成膜装置に予定外の利用出来ない期間があったため、現在も最適条件を継続して探っているが、現時点で得られている最適条件でも10μK程度の分解能を持つ温度計を作成できるので、熱伝導測定装置の試作を開始している。 また測定プローブの開発については、設計した測定デバイスについて、熱流解析シミュレーションを行った上で、測定装置の試作を進め、技術的課題の洗い出しを行った。この年度では、プローブの作成プロセスを完遂することはできなかったが、最終工程である基板の深彫りエッチングのプロセスのみを残す段階まで進めることができた。 一方、測定を予定している磁性体の作成については、研究計画通り進行している。熱伝導測定装置の参照試料としては、すでに詳しく実験がなされている(CH3)4NMnCl3 (TMMC) を用いる予定であるが、純良な単結晶の作成を終え、各種の物性測定から物質の同定も行った。また、量子臨界状態での熱輸送特性の研究対象物質として、非磁性基底状態を持つ低次元磁性体の物質探索を行っていたが、銅酸化物のTl4CuTeO6という物質が、4T程度の比較的低い磁場で非磁性基底状態から磁気秩序状態へ量子相転移を起こすことがわかった。この物質については、水熱合成法により単結晶も得られており、熱伝導の測定はすぐに開始できる状態にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、微細加工技術により測定プローブの作成時に温度計薄膜や電気信号配線にスパッタ成膜装置を多用する。しかしながら概要の項に記述したように、同装置の整備状態が良好でなかったために、性能が安定しない時期があった。このような理由により、研究計画にやや遅れが生じた。現在は、同装置の保守計画を作成し、定期的に保守作業を行うよう運用方法を改善したため、このような停滞は今後生じないものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の前半に熱伝導測定プローブの初期ロットを完成させる予定である。並行して、熱伝導測定のための計測システムのソフトウェア開発をテスト測定を繰り返しながら進めていく。 本研究では、まずは、温度・磁場の制御環境が整っているカンタム・デザイン社製の物理特性測定システムに組み込む形でシステム構築を行い、その後12Tの最高磁場を持つ超電導磁石とと希釈冷凍機を組み合わせた測定系を構築する予定である。そのために、超電導磁石と希釈冷凍機の整備も今年度の後半に開始する。
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Causes of Carryover |
必要物品の購入を行い予算の執行を進めていたが、残金で購入出来る喫緊に必要な物品が存在しなかったため、翌年度に繰り越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した助成金と翌年度分の助成金は、合算して試薬や研究に必要な消耗品・計測器などの備品の購入および、旅費として使用する予定である。上記の繰り越し金額によって研究計画を大きく変更する必要はないと考えている。
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Research Products
(7 results)