2016 Fiscal Year Research-status Report
スピンゼーベック効果の微視的理解とその可視化に関する理論研究
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15K05151
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
安立 裕人 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (10397903)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スピンゼーベック効果 / 熱電発電 / マグノン / スピン波 / スピンホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題で対象とするのは、磁性体内の温度勾配から磁気の流れであるスピン流を作り出す「スピンゼーベック効果」という現象である。スピンゼーベック効果は2008年に日本でその存在が発見された新しい現象であるが、その発見から今日に至るまで、簡便なスピン流の生成手法として大変大きな注目を集めている。スピンゼーベック効果をスピンホール効果と組み合わせると、スピンゼーベック効果で得られたスピン流から電流を生成できる。そのため、スピンゼーベック効果は新しい熱電発電の要素技術としても興味を惹いている。 平成28年度は、このスピンゼーベック熱電発電素子の熱機関効率の定式化を行った。スピンゼーベック熱電発電素子は、広い意味では、従来の熱電発電現象で知られている異常ネルンスト熱電発電素子と同じく、温度勾配と直交する方向に電圧を生じる「横型素子」であると分類できる。そこで、まずはじめに異常ネルンスト熱電発電素子の熱機関効率の定式化を行った。一方で、異常ネルンスト熱電発電素子とスピンゼーベック熱電発電素子が大きくことなるのは、前者が単一の物質から構成されるのに対して、後者は磁性体と非磁性電極の2つから成る。この違いがどこに反映されるのかによく注意しつつ、異常ネルンスト熱電発電素子の熱機関効率の定式化をスピンゼーベック熱電発電素子に拡張した。 この成果は Proc. IEEE 104, 1946-1973 (2016) に出版され、この分野で広く読まれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にはスピンゼーベック熱電発電素子の熱機関効率の定式化は含まれていなかったが、計画変更したこの成果は Proc. IEEE 104, 1946-1973 (2016) に出版され、この分野で広く読まれているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、当初の計画にあったTc近傍のスピンゼーベック効果について取り組みたいと考えている。予備的な計算によると、単純なモデル化では文献で報告されている実験結果を再現するのは難しいと思われる。そのため、必要な要素を慎重に選択しながら研究を進める計画である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属機関が原子力機構から岡山大学にかわり、異動後1年目ということで、新しい環境に慣れるのに時間がかかったという側面がある。とくに、研究活動に加えて教育業務についても勝手が分からず、また出張を伴う会議やワークショップへの参加を控えたことが大きな要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は積極的に国内国際会議に出席し、情報発信をする予定である。繰越金はそのための旅費に用いることを計画している。
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[Presentation] Spin pumping into superconductors2016
Author(s)
Masashi Inoue, Hiroto Adachi, and Masanori Ichioka
Organizer
International School on Spintronics & Spin-Orbitronics
Place of Presentation
Kyushu University, Fukuoka
Year and Date
2016-12-16 – 2016-12-17
Int'l Joint Research