2016 Fiscal Year Research-status Report
ファン・デル・ワールススピン密度汎関数法の開発および超高圧下と超強磁場下への応用
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15K05165
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小田 竜樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30272941)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分散力 / 密度汎関数法 / 非経験的計算法 / 固体酸素 / メタ磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)当研究グループで開発したスピン密度を考慮したファン・デル・ワールススピン密度汎関数(VDW-SDF関数)とH27年に英国で新しく提唱された関数(SVDW-DF関数)における特徴を明らかにするべくいくつかの系で具体的に電子状態解析、原子構造の最適化等を行ったところ、スピン密度へ拡張したことによる影響は分子間の強磁性的結合には現れず、反強磁性的結合にのみ現れることが分かった。このため反強磁性の場合にスピン密度の効果がなぜ現れるのかを明らかにしておくことが、研究を加速度的に推進するために有意義であると考えられる。 (2)SVDW-DF関数に対して、当研究グループで開発したVDW-SDF関数の特徴を明らかにすべく研究を推進し、双方の関数は非常に類似の結果を与えることが明らかとなりつつある。計算量は、当研究グループで開発したVDW-SDF関数がより少なく、この汎関数の利点であることが明らかとなっている。 (3)SVDW-DF関数をノンコリニア磁性に拡張する取り組みを推進した。計算の有効性を明らかにするため、応用すべき系についての検討を進め、適用範囲を広げる開発研究を進める方針である。 (4)強磁場下の固体酸素等の磁性分子結晶が示す特異な構造相転移と磁気構造相転移を理論的に解明・予測するため、簡易な外部磁場印加する手法の開発を推進した。磁気に関するエネルギーの評価を進めることにより、外部磁場印加の時の定量的および定性的な物理精度の検討が必要である。 (5)固体酸素の強制強磁性状態としてでの結晶構造を決定する。並行して一般的な強磁場下での結晶構造を決定する手法を開発する。これを固体酸素(α相)に適用し、強磁場下での結晶構造変化や磁化過程の決定を通して、開発手法の有効性を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発した汎関数または扱っている関数は、順調に実装が完了した。これらの関数は、従来のGGAやLDAの結果と比較して、その物理精度、特に体積の計算精度が格段に向上していることが明らかとなってきており、研究成果が上がっていると考えられる。その一方で、構造の異方性がある場合に実験を再現できない場合が存在していることが明らかとなり、その場合の一つとして、反強磁性結合に関係している場合ではないかとの仮説を立てることができている。さらに密度汎関数法よりも高い物理精度が期待できる計算手法(多体電子論に基づいた高精度電子状態計算等)による調査の準備が整ってきた段階であり、今後反強磁性での汎関数の欠点についての知見が得られるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
次の点を考慮して、予定されている研究計画に基づいて研究を推進する。 それは、固体酸素などを用いて、高磁場極限として強制強磁性状態を仮定して、結晶の構造相転移を実際に示すことを示し、メタ磁性へ適用できる計算手法の開発を視野に入れて研究を推進する。
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Causes of Carryover |
H28年度に計画していた連携研究者、研究協力者との研究打合せの日程調整が不調に終り、H28年度に実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越された予算をH28年度に開催予定の研究打合せ開催のための経費に充てることとして、本来予定されていたH28年度予算を着実に執行する予定である。
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