2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05168
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
佐野 和博 三重大学, 工学研究科, 教授 (40201537)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 浩次 三重大学, 工学研究科, 准教授 (70281847)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 電場誘起超伝導 / 第一原理計算 / ダイヤモンド表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
シリコンやゲルマニウムなど通常の半導体ではホウ素などの不純物を結晶中に微量導入し電気伝導を担うキャリヤを注入しているが、キャリヤを不純物によらず外部からの電界により注入することができれば、今まで超伝導が観測されていない物質で新たに超伝導が見出されたり、超伝導になることが知られている物質においても、不純物による乱れの効果を受けないので超伝導転移温度の上昇が期待される。外部電場を用いて半導体表面にキャリヤを注入したり制御したりする技術自体は、電界効果トランジスタなどですでに実現しているが、超伝導を引き起までにキャリヤ密度を高めることは難しかった。しかし近年、イオン液体などを用いた電気2重層構造を用いて表面に強力な電場を掛け、従来では不可能であった多数のキャリヤを誘起することが可能になってきた。この超伝導を電場誘起超伝導と呼び、外部電場の強さを変えることにより超伝導状態の制御が可能になるなど興味深く注目を浴びている。 我々は早くからこの電場誘起超伝導の可能性に注目して、第一原理計算の立場から電場下での表面電子状態や超伝導の可能性などの研究を行ってきた。その中でも特にダイヤモンド結晶に注目し、その表面に誘起されるキャリヤ分布などを現実的なモデルを用いて明らかにしてきた。本研究ではそれをさらに発展させ電子格子相互作用定数を第一原理計算により求め、格子振動を媒介にした電子間引力によるs波超伝導の転移温度を評価した。その結果、ダイヤモンド結晶の110面に電場を0.5V/オングストローム程度掛ければ超伝導転移温度として1ケルビン程度の値となり、観測可能であろうという事がわかった。この電場の強さは実験的に報告されている値程度であり、今後110面に電場を掛けるという実験の進展が期待される。この結果は学術論文としてまとめ発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一原理計算を用いてダイヤモンドなどの半導体における電場誘起超伝導の可能性を検討することが本研究の中心課題であるが、この研究によりダイヤモンド結晶の110面に0.5V/オングストローム程度の電場を掛けることにより超伝導の観測可能であろうとの結果を得て学術論文としてまとめ発表することができた。従って研究は概ね順調に進展したものと判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はダイヤモンドの表面以外にもシリコンやゲルマニウムなどの半導体表面での超伝導、さらにはSrTiO3などの電場誘起超伝導の研究も行って行きたい。特にシリコン系ではホウ素をドープした系ではあるが、表面の厚さによって超伝導転移温度が顕著に変化することが報告されており表面や界面での超伝導現象を考える上で大変興味深く、その点も解明していきたい。
|
Causes of Carryover |
研究で使用している第一原理計算ソフトは並列計算が可能であるので、現有設備で並列計算が可能となるよう整備を図っていたが並列計算用の設定等が思った以上に複雑で時間を要している。そのためコンパイラーの新規購入予定があったが、設定が完了しないと並列計算用に買う意味があまりなく、購入を次年度に繰り越すことにした。今後、設定が完了次第コンパイラーを購入しより高速な並列計算が可能となるよう計算環境を整えていく予定である。
|
Research Products
(6 results)