2015 Fiscal Year Research-status Report
近藤半導体セリウム1-2-10系における異常な反強磁性秩序発現機構の解明
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15K05173
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
世良 正文 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (40196978)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近藤半導体 / CeT2Al10 / 反強磁性秩序 / スピンギャップ / 電荷ギャップ / ジグザグ鎖 / 2次元性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近藤半導体はf電子系において一つのカテゴリーを形成し,古くから盛んに研究されている。従来の近藤半導体の基底状態は大きなc-f混成により非磁性であったが,2009年に発見された近藤半導体CeT2Al10 (T=Fe, Ru, Os)は,T=Ru, Osは,反強磁性秩序を示す初めての例として盛んに研究されている。これは近藤半導体をベースとした反強磁性秩序であり,多くの異常物性を示す。本研究では,これら異常物性の起源を明らかにすることを目的としているが,本年度においては,以下のような成果が上がった。 ①CeRu2Al10のCeサイトをLa, Prで置換した系を調べた。 ②CeRu2Al10のRuサイトをRhで置換した系の光学伝導度を調べた。40meVのc-f混成ギャップがわずか5%のRh置換で消失することを見出した。一方,反強磁性転移温度T0は27Kから24Kへとわずかな現象しか示さなかった。これから,CeRu2Al10の高いT0の起源へのc-f混成の寄与は小さいことが明らかになった。 ③CeFe2Al10のCeイオンは価数揺動していること分かっており非磁性基地状態の近藤半導体である。ところがFeサイトをRhで置換すると,急速にCeの4f電子は局在的性質を示すようになることを見出した。これはTサイトのd電子数を変える置換になるが,Tサイトのd電子がこの系の磁気的性質を支配していることが明らかになった。 ④CeT2Al10の参照物質として,SmRu2Al10の磁気輸送特性および高精度X線回折による磁気秩序の詳細を調べた。反強磁性転移は15Kと6Kの2つあること,磁気モーメントはb軸を向いていることを明らかにした。また,X線回折により,磁気秩序の波数の温度依存性の詳細を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単結晶作(特に元素置換系)は順調に進んでいる。また,国際共同研究を含め,研究はおおむね順調に進んでいる。本年度は,従来の測定手段に加え,光学伝導度,高精度X線回折実験で大きな成果が上がった。本年度は論文をして公表に至っていないが,フランスLLB,英国アップルトン研究所における中性子散乱実験,理研・アップルトン研究所におけるμSR実験も順調に進んでおり,次年度には公表の予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の反強磁性近藤半導体CeT2Al10の研究は,発見から7年が経ち,様々な角度から多くの実験が行われてきたが,異常な物性のミクロな起源は未だに解明されていない。このような状況を打破するためには,さらに違った角度からの研究が必要である。以下に今後の研究の推進策を述べる。①磁気励起の決定が最重要課題であり,大型単結晶による中性子非弾性散乱実験を行う必要がある。これについては,フランスLLB研究所のMignotと英国アップルトン研究所のAdrojaと共同研究を行う。②SPring-8における高精度X線回折実験により,磁気秩序の精密な構造決定を行う。③CeT2Al10のCeの磁気モーメントがCeサイト置換によりどのような影響を受けるかを調べることにより,CeT2Al10の異常な基底状態の起源を探る。
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Research Products
(20 results)