2017 Fiscal Year Research-status Report
変分理論による重い電子状態と磁気秩序状態の競合の研究
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15K05191
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
久保 勝規 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (50391272)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非クラマース系 / 超伝導 / 多極子 / 重い電子系 / 強相関電子系 / 物性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、重い電子系の多極子秩序や超伝導を調べている。 多極子の物理については、高次の多極子を持つのに十分大きな自由度を持つ四重項が主に調べられてきた。ただし、大きな自由度というものは高次の多極子を持つための十分条件ではあるが必要条件ではない。もし、結晶場基底状態が一重項ではなく、かつ双極子モーメントを持たない場合には、必然的にその自由度は高次の多極子モーメントで記述される。実際、非クラマース二重項は双極子モーメントを持たず、四極子と八極子の自由度を持つ。 我々は昨年度後半に、結晶場基底状態が非クラマース二重項になっている系の多極子相互作用を調べていた。その結果、この系の多極子状態を記述するためには、2軌道模型では不十分で3軌道以上の模型が必要であることが明らかになっていた。 そこで本年度は非クラマース二重項を記述する3軌道模型の超伝導を調べた。手法としては乱雑位相近似を用いた。その結果、軌道の異方性に起因した異方的超伝導として、d波のスピン一重項超伝導状態が実現することがわかった。実際、この超伝導状態では結晶の対称性が立方晶から低下して、四極子モーメントが誘起されると期待される。結晶場基底状態が非クラマース二重項であるプラセオジム化合物 PrT2X20 (T = Ir, Rh, X = Zn; T = Ti, V, X = Al) 超伝導体では、超伝導状態は四極子秩序相の中で実現しており、本研究で得られた超伝導状態はこれらの実験結果と整合している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、結晶場基底状態が非クラマース二重項になっている系の多極子相互作用を調べ、この系の多極子状態を記述するためには、2軌道模型では不十分で3軌道以上の模型が必要であることが明らかにした。この成果を本年度は国際会議で報告している。 この結果を踏まえ、本年度は非クラマース二重項系の超伝導不安定性を乱雑位相近似を用いて調べ、軌道の異方性に起因した異方的超伝導として、d波のスピン一重項超伝導状態が実現することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、非クラマース二重項系の超伝導不安定性を乱雑位相近似を用いて調べ、軌道の異方性に起因した異方的超伝導として、d波のスピン一重項超伝導状態が実現することがわかった。 これを踏まえ、結晶場基底状態が非クラマース二重項であるプラセオジム化合物 PrT2X20 (T = Ir, Rh, X = Zn; T = Ti, V, X = Al) 超伝導体を念頭に置き、非クラマース系の超伝導と多極子秩序状態の共存について調べる。
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Causes of Carryover |
(理由) H29年度において数式処理システム(Mathematica)の購入を予定していたが、H29年度は主に数値的な計算を行うこととし、同システムの購入を延期したため購入費用が次年度使用額として生じることとなった。 (使用計画) 数式処理システム(Mathematica)の購入費用として使用する。
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