2015 Fiscal Year Research-status Report
開放進化系の頑健性決定機構についての統計物理学的研究
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15K05202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島田 尚 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90431791)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 頑健性 / 安定性 / 進化系 / 開放系 / 生態系 / 多様性 / 相転移 / システミックリスク |
Outline of Annual Research Achievements |
現実の大規模で複雑な系の頑健性、より素朴にはそれらがなぜ存在できているのか、という問題は分野をまたいで大きな関心を集めて来た問題である。一方で、生体内反応系/遺伝子ネットワーク、生態系、経済・社会等の現実の多くの複雑な系に共通して見出される重要な特徴は見過ごされがちであった。それは系が本質的に開放系であることである。これらの系では多様な要素が相互作用しあいながら、新規要素の包摂と要素の消滅を繰り返すことによって複雑な構造を持つに至っているのである。本研究ではこのような「開放進化系」について研究代表者が最近発見した新しい頑健性決定機構について、その普遍性と現実問題への適用の妥当性を吟味することを目標としている。 研究初年度である本年度にはまず理論の基になっている簡単な模型の拡張と解析とを主に進めた。この結果、(A)既存要素がすでに持っている相互作用本数に比例して新規導入要素からの相互作用が結ばれる場合及び (B)新規導入種の持つ相互作用項の平均が従来の0からずれた場合 について解析を進めることで、本研究であつかう頑健性脆弱性転移の相構造が保たれることを明らかにした。また、この転移機構のさらなる理解のために元のモデルの平均場近似モデルを拡散過程として取り扱う試みについても解析を進め、このアプローチがなぜどこで頑健性転移の説明に失敗するのかの理解が深まった。さらに、あるタイプの自然な常微分方程式系が本研究であつかう簡単な模型に帰着しうることなども見出した。 これらの成果については英語論文、英語著書における一章、日本語解説記事、国内外の学会での講演を通じて発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績で述べた通り、当初計画で挙げた「(A)既存要素がすでに持っている相互作用本数に比例して新規導入要素からの相互作用が結ばれる場合及び (B)新規導入種の持つ相互作用項の平均が従来の0からずれた場合」について順調に解析を進めることができた。また、これに並行して行った理論研究も順調に進み、基本モデルの性質や適用可能性についてより良い理解を得ることができた。 また、拡張モデルとして「系のサイズをあえて固定したモデル」と「相互作用の結合に双方向性を持たせたモデル」についてのシミュレーション解析にも取り掛かることができ、当初予想していなかった結果が得られつつある。 以上の状況に鑑み、本研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまず、現在までにシミュレーション結果が得られ主にその解析の段階にある「系のサイズをあえて固定したモデル」と「相互作用の結合に双方向性を持たせたモデル」についての解析を行う予定である。これらのモデル拡張の方向性は昨年度の Kimmo Kaski 教授グループでの滞在研究から生まれたものであり、本年度も共同で研究を行うことでこの課題を進展させたいと考えている。特に、社会系の物理学の核として人類学分野等を含んだ幅広い分野の研究者が集う夏季に滞在することで、「現実問題との対応付け」というもうひとつの重要な研究主題についても有益なものとなると考えている。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに予算を活用し、単独で有効活用するのが難しい小額の剰余が残るのみとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度の小額の剰余分については、2年度目予算と合わせて研究に活用していく予定である。
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Research Products
(10 results)