2015 Fiscal Year Research-status Report
カーネル法による動的スケーリング解析の改良と非平衡緩和法の新展開
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15K05205
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
尾関 之康 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (70214137)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非平衡緩和法 / 動的スケーリング解析 / カーネル法 / 臨界普遍性 / Kosterlitz-Thouless 転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
カーネル法による動的スケーリングの改良が成功し、スケーリング関数はカーネル関数によって表現され、試行錯誤の過程が排除され、曖昧さの無い構築が可能になった。さらに共役勾配法による最適化の導入によって、効率の良い高速な評価法が実現した。作業がほぼ自動化され、様々な応用への道が開きつつある。緩和データの多さを利用したBootstrap法により、評価誤差の大幅な改善が見込まれる。緩和時間の関数形を変えた複数のスケーリングや関数形を仮定しないスケーリングを比較し、転移の種類の判別に利用するアイデアを得た。また、スケーリングの補正項の導入も容易になり、より高精度な評価への道を開いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カーネル法の導入による曖昧さの無いスケーリング関数の決定、最適化アルゴリズムの採用による高速で自動化されたスケーリング最適化の実行、等が実現され、当初計画していた効果が実証された。この成果により、計画されていた応用も可能になり、今後の発展が期待される状況になった。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した方法の改良と以下の3点への応用に重点を置く。 1)「補正項による評価の改善」補正項の含め方には議論の予知があり、転移の種類毎に検証する必要がある。得られた高速スケーリング法を応用し、様々な系について調査していく。 2)「KT 転移の判別法の確立」スケーリング作業の自動化によって、複数の最適化作業を要する解析が容易に行えるようになるので、これを利用する。動的スケーリングにおける緩和時間の関数形を、KT 転移由来の指数型とした結果と二次転移由来の冪型とした結果を比較する。さらに、関数形を仮定せず、全ての観測温度点の緩和時間をパラメーターとする多パラメーターのスケーリングも行い比較する。実際には、振舞いの分かっているKT 転移系と二次転移系について、矛盾や曖昧さの無い比較法の確立が必要であり、作業の自動化がこの研究を支えている。 3)「KT転移の動的臨界普遍性」KT 転移には静的指数と動的指数z が独立に存在するが、予備的な研究では、前者は模型や変数に強く依存し、後者はほぼ一定の普遍性を示唆していた。この描像は、通常の強磁性転移とは異なる振舞いだが、精度を高めて確立したい。また、KT 転移では低温相内でも同様に指数が定義できるので、KT 相内の両指数の振舞いを調べ、特に動的普遍性の構造を明らかにしたい。
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