2017 Fiscal Year Research-status Report
カーネル法による動的スケーリング解析の改良と非平衡緩和法の新展開
Project/Area Number |
15K05205
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
尾関 之康 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (70214137)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非平衡緩和法 / 動的スケーリング解析 / カーネル法 / 臨界普遍性 / Kosterlitz-Thouless転移 / トポロジカル相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
改良された動的スケーリング法の検証と応用を行った。 前年までに確立した、Kosterlitz-Thouless(KT)転移の特定と転移温度評価のための、高信頼な動的スケーリング解析を用いて、30年来の難問と言われている三角格子反強磁性ハイゼンベルグ模型の解析を試みた。低温で存在が指摘されてきたトポロジカル相転移をKT転移と同様に解析して矛盾が無い事を示し、転移温度の値を従来の評価を修正する高精度に評価し、さらに静的・動的臨界指数の評価から、XY系とは異なる普遍性の可能性を指摘した。この結果は、低温相内での臨界状態の定義を可能にし、その評価から今回の結論をさらに裏付けることを期待させる。。補正項を導入した動的スケーリング解析の有効性が、前年までに2次相転移において示されたので、KT転移の解析への拡張を模索した。有効性を確認するために、2次相転移では2次元や3次元Ising模型の転移温度等が活用されたことを踏まえ、KT転移においても同様の情報を供する模型の探索を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KT転移を始めとするトポロジカル相転移の系統的な解析が可能になり、フラストレーション系の難問への応用が着実に進展している。以前の解析に比べて信頼性が上がり、より詳細で正確な物理の洞察に道を開いた。さらに、広範囲の問題の解決が視野に入っており、今後の発展が期待される。また、補正項の導入により2次相転移系の精度向上が実現した動的スケーリング解析は、今後KT転移のような他の相転移に拡張する段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年に引き続き以下の課題を設定し、プロジェクトの完成を目指す。 1)「トポロジカル相転移系への応用」上で述べたように、KT転移系の解析の信頼性は非常に高く、また系統的で応用が容易なので、2次元系で論争されてきた様々な問題への応用を試みる。これにはスピングラス転移も含まれ、長年の難問に一定の成果を与えることが期待される。 2)「補正項による評価の改善」補正項の含め方には議論の予知があり、転移の種類毎に検証する必要がある。得られた高速スケーリング法を応用し、様々な系について調査していく。KT転移に発展させるため、ベンチマークを与える模型の探索を進めたい。 3)「KT転移の動的臨界普遍性」KT 転移には静的指数と動的指数z が独立に存在するが、予備的な研究では、前者は模型や変数に強く依存し、後者はほぼ一定の普遍性を示唆していた。この描像は、通常の強磁性転移とは異なる振舞いだが、精度を高めて確立したい。また、KT 転移では低温相内でも同様に指数が定義できるので、KT 相内の両指数の振舞いを調べ、特に動的普遍性の構造を明らかにしたい。
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