2016 Fiscal Year Research-status Report
液体カルコゲン系の金属化に伴う「鎖形態のゆらぎ」と「空隙形成の動的過程」
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15K05206
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
丸山 健二 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (40240767)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液相相転移 / 中距離構造 / 粒子線散乱 / 3次元構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
液体Seの高温高圧下における半導体―金属転移のメカニズムについて研究を継続した。逆モンテカルロ法によって得られた液体構造から、1本鎖を抽出しらせんやジグザグによる構成分率を調べた。これまでは、四面体あるいは三角形構造ユニットをもとにして中距離(高次)構造について解析を行ったが、本年度において新しく、中距離の原子間距離の分布についても解析を行った。Seは共有結合により鎖状構造を有しているため、最近接や第2近接原子までの距離は結合距離や結合角により決定され、鎖構造の違いにかかわらずほとんど差がみられない。このため、本研究ではさらに遠い第4近接までの距離の分布を求めることによりSeの鎖構造の変化を解析した。 この結果、Se鎖のらせんやジグザグ」構造を表すと考えられるピークを見出し、相転移近傍での構造変化での構造モデルと矛盾しないことを示した。この結果は、ドイツで開催された液体およびアモルファス金属国際会議にて口頭発表した。 このほか、酸化チタンを基本とした希土類を含むガラスの構造解析をおこなった。この物質は非常に高い屈折率を有するため将来の光学材料として有望視されている。これらの物質の屈折率と構造の関係を調べるために金属イオン周りの局所構造の解析が望まれている。本研究では、安定同位体置換中性子散乱とX線散乱を同時に用いて希土類金属(ここではSm)周りの局所構造を明らかにした。以前は中性子散乱尾データのみを用いて解析を行ったが、Sm周りの構造についてあまり信頼性の高い結果が得られていなかった。今回のX線散乱も同時に用いた解析の結果すべての局所構造が信頼性があると考えられ、結果を同上の国際会議にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体Seの半導体ー金属相転移に関する構造変化についておおむね解決することができた。 また、動的構造に関する非弾性散乱データの解析に取り組んでいる。このために、従来の方法に加えて、特定のモデルによらない解析法について開発を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
液体Seの静的構造に関する解析はおおむね終了したが、さらに構造変化について的確なデータを示すために鎖構造に制限を加えながら解析をすすめ、本年度中に発表する。 同様に液体セレンのダイナミクスの変化を調べるために、非弾性散乱データの解析を進める。これまでに報告されている情報との比較のほかに、新しくモデルに依存しない解析法により励起状態の解析を進める。このために、計算機環境の増強を図るとともに解析プログラムの開発を行っている。 このほか、光電子分光などの新しい手法との連携について模索していく。
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Causes of Carryover |
J-PARCにおける試料環境の問題により予定した測定を延期しているため、試料セル、旅費等の必要経費が予定より少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の実験を平成29年度に行い使用する。
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Research Products
(3 results)