2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K05208
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 淳史 静岡大学, 理学部, 教授 (40222062)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量子相関 / 動的相関関数 / 量子転送行列法 / 量子逆散乱法 / 厳密WKB法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は量子系の形状因子に対して、完全 WKB 法に基づく厳密な評価法を確立する事により、量子相関の研究に新しい定量的方法論を構築し、量子多体系の緩和現象等に応用する事を目的とするものである。 今年度は量子転送行列法と量子逆散乱法の枠組みを利用し、任意の温度、時間、磁場において量子相関関数のダイナミクスを記述する具体的な表式を解析的に導出することに成功した。その結果に関して、メルボルン(オーストラリア)およびハノーファ(ドイツ)での国際会議において招待講演を行った。その結果をまとめ論文として公表した(J. Stat. Mech.: Theor. Exp. (2017) P113106, (43pp))。 この定式化の後、スピン1/2の量子スピン鎖に対して、具体的かつ定量的な解析を行った。XX模型と呼ばれる模型では、そのzz相関は非常に簡単となる事がよく知られている。zz相関がJordan-Wigner変換により、フェルミオンに対して局所化する事がその理由である。我々の定式化を用い、フェルミオンを導入する事なしに、形状因子展開の立場より簡明に説明することに成功した。他方、同じ模型のxx相関に関しては、フェルミオンに対して非局所的であるため、Jordan-Wigner変換を用いた解析が非自明となり、現在まで高温極限や長距離極限でしか具体的な結果は知られていなかった。この問題に対し、フレッドホルム行列を用いた解析を行い、これらの極限を再現するだけでなく、広い温度、時間、磁場領域における動的相関関数を評価することに成功した。現在この結果を論文にまとめている
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平衡系に関する定式化および定量的解析に対して予想以上に時間が必要であった。 特に非線形積分方程式を用いた数値積分で, 指数関数の肩に特異性を含む真性特異点を取り扱う必要が起こる。これにより数値的な不安定性が生じ、精度が出なかった。そのため短時間の時間発展の後、発散をおこしてしまい、実用的でなかった。そこで、当初予定していた通り、有限トロッター数の計算を併用した。これには有限系でのベーテ方程式の解をすべて求める必要が生じる。小さなトロッター数に対しては、対角化と比較することにより、すべての励起状態を同定することが可能であり、安定的に時間発展させることができた。一方、大きなトロッター数に対してベーテ方程式の解を求めることが、予想以上に数値的に不安定で、特に高い励起状態を安定的に計算することが難しく、なかなか信頼しうる精度に到達しなかった。現在、特殊な変数変換を行うことにより、少なくとも平衡系に関しては、ようやく長時間の安定的計算が可能となったが、本来の目的であるクエンチ系の解析まで研究が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究者とともに、クエンチ系でのfidelityに関して、量子転送行列による解析を行う。量子転送行列に対して特殊な境界条件を加えることにより、分配関数を評価することとほぼ同様にこれは評価することが可能であるため、早急にこれを行う。 fidelityは、異なる時間における波動関数の重なり積分であるが、これを超えた詳しい非平衡の時間発展を解析するためには、物理的である一点関数の時間発展を追う必要が生じる。そこで特殊な一点関数である磁化に関して、やはり量子転送行列の枠組みで取り扱うことにより、非平衡発展の様子を定量的に調べる事を予定している。これを厳密に行うには無限回の積分を行う必要が生じるため、形状因子展開を利用して主要項を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
非平衡系の定式化が遅れ、論文作成の議論に共同研究者のもとを訪問するため用意しておいた研究費を使用する事ができなかった。今年度9月に国際会議のためフランスを訪問する際に、共同研究者のもとを訪問し議論をすすめるため、これを使用する予定である。
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Research Products
(5 results)