2015 Fiscal Year Research-status Report
強相関トポロジカル相における量子エンタングルメントと創発的自由度の研究
Project/Area Number |
15K05211
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸塚 圭介 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (80291079)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | トポロジカル相 / SU(N)冷却原子気体 / 磁化プラトー |
Outline of Annual Research Achievements |
一次元光格子中のSU(N)フェルミ気体のMott絶縁相の広い部分で、いわゆる対称性に護られたトポロジカル相が実現することがわかってきているが、戸塚と谷本は、エンタングルメントスペクトラムや非局所秩序パラメータを用いて、このSU(N)トポロジカル相を特徴づけることに成功した(Tanimoto-Totsuka, Phys.Rev.B投稿中)。また、一連の一次元SU(N)冷却原子系に関する研究成果を総合報告の形でまとめ、出版した(Capponi-Lecheminant-Totsuka, Annals of Physics 2016)。 以前、戸塚は田中、胡両氏と共同で、強磁場中の磁化プラトー現象(磁化過程に平坦部が出現する現象)が、波動関数の量子性に起因するBerry位相と密接に関係していることを示したが、一次元の場合にこのBerry位相の効果を子細に検討することにより、対称性に護られたトポロジカル状態が存在し得ることを明らかにした(Takayoshi-Totsuka-Tanaka, Phys.Rev.B 2015)。 カゴメ格子上のスピン-1/2模型に現れる、飽和磁化に対して磁化ゼロ、1/3、2/3の3つの磁化プラトーのうち、強結合領域で「量子ループ模型」にマップされる磁化1/3のものについて、量子モンテカルロ計算によりスピン液体磁化プラトー相を含むこの系の相図を決定した(Plat-Alet-Capponi-Totsuka, Phys.Rev.B 2015)。 一次元のスピン偏極したp波超伝導体の模型、いわゆるKitaev鎖に、より長距離の超伝導ペアリングを考慮したモデルについて、複数のペアリング項の競合により出現するトポロジカル相や秩序相の相図を決定し、量子相転移の性質を調べた。また、相互作用を有限時間で変化(スイープ)させた時のトポロジカルな性質についても詳しく調べた(Ohta-Tanaka-Danshita-Totsuka, J. Phys.Soc. Jpn. 2015, Phys.Rev.B 2016)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、一次元SU(N)冷却原子系の物性の解明と、強磁場中でもトポロジカルな磁化プラトー状態の研究を2つの柱に設定していた。一番目のテーマについては、本課題の研究費に加えて、フランス国立科学研究センター(CNRS)の国際科学共同研究プロジェクト(PICS)の予算を用いて、昨年度は夏と冬にそれぞれ2週間ずつフランスの共同研究者を訪問して、集中的に議論・研究を進めることができた。また、本課題の成果も含む最近の成果について、フランスの研究者と共著で総合報告の形にまとめることができた。二番目の課題についても、Toulouse大の共同研究者と共に数値的、解析的な研究を行い、その成果を論文(Physical Review B誌)にまとめることができた。また、関連したテーマについて、国内の研究者と共同研究を行い、その成果を出版した(Physical Review B誌)。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画は概ね順調に進捗している。今年度からは、分数量子ホール系を一次元系を結合させることで構成するcoupled-wire constructionと、テンソルネットワークなどの手法との関連について重点的に明らかにしたい。このテーマについては、5-6月に基礎物理学研究所で開催される国際研究会の際にいろいろ議論を重ねる予定である。また、SU(N)冷却原子気体のトポロジカル相の研究については、今年度7月に、この分野の指導的研究者を集めた2週間のワークショップを開催する予定であるので、その際にまた大きな進展があると期待している。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じてはいるが、1710円と少額であり、これは航空券代などの予想額と実際の手配額との誤差などから生じ得る許容範囲内のものであると考える。当面不要不急の文房具などを購入して無理に使用することもできたが、それよりは次年度分と合わせて有効利用するほうが有意義であると判断した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額が生じてはいるが、1710円と少額であり、本年度の使用計画には特に問題はなかったと考える。次年度配分額と合わせて有効利用する予定である。
|