2016 Fiscal Year Research-status Report
強相関トポロジカル相における量子エンタングルメントと創発的自由度の研究
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15K05211
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸塚 圭介 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (80291079)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トポロジカル相 / エンタングルメント / 冷却原子気体 |
Outline of Annual Research Achievements |
一次元の対称性に護られた(Symmetry-Protected Topological phases--SPT phases)におけるダイナミクスを調べた。具体的には、異なるSPT相をまたぐように相互作用を変化(スイープ)させ、それに伴う端状態、非局所相関、エンタングルメント・スペクトラムなどの変化を調べ、これがスイープで励起される準粒子と密接に関係していることを突き止めた(Ohta-Tanaka-Danshita-Totsuka, Phys. Rev. B 93, 165423 (2016))。さらにこれに関連して、SPT相と周期的外場との競合についても調べた(Ohta-Totsuka, J. Phys. Soc. Jpn., 85, 074003 (2016))。前年度から継続中のテーマである、一次元の光格子中のSU(N)対称性を持つアルカリ土類フェルミ原子気体を用いたSPT相の実現について、フランスの研究者と共同で、二連井戸型の光格子を用いた新たなSPT相の実現方法を提案した(Fromholtz et al. 準備中)。また、関連するSU(N)系のトポロジカル相をメインテーマとして、7月に京大基研にて二週間の国際ワークショップを開催した(http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~sun2016/)。局所的な秩序変数の定義できないトポロジカル相の非局所的なプローブとしてエンタングルメントエントロピーがあるが、たとえば二次元の非自明なエンタングルメントエントロピーがどのようにして一次元から創発されるか、などはよくわかっていない。今村と戸塚は、これを理解する第一歩として、結合させた一次元系にどのようにゲージ自由度が創発されるかを明らかにした(Imamura-Totsuka, arXiv: 1605.09235)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、昨年度の実績報告でも触れたとおり、一次元の対称性に護られたトポロジカル相の物性(基底状態、エンタングルメント、ダイナミクスなど)の研究と、二次元、三次元の長距離エンタングルメントを持つトポロジカル状態の結合ワイヤ構成法の研究を柱として研究を行った。本課題の研究費とフランス国立科学研究センター(CNRS)の国際科学共同研究プロジェクトの予算を用いて2016年秋にフランスの共同研究者のもとに2週間滞在して共同研究を進めたほか、夏には関連するテーマについて、2週間の国際ワークショップを開催することができた。その成果については、2篇の論文を投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も研究計画はおおむね良好に達成できたと言える。平成29年度は、結合ワイヤ構成法とトポロジカル相のエンタングルメントの関係について集中的に調べる予定である。特に、三次元のトポロジカル相のエンタングルメントについては未だに不明な部分が多く、結合ワイヤ構成法を用いてアプローチしたい。平成29年秋に、関連分野の研究者が多く集まる国際研究会を開催予定であるので、参加研究者とも議論を重ねる予定である。
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