2015 Fiscal Year Research-status Report
液体の動的構造因子と横波の関係~古典および第一原理分子動力学法
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15K05214
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宗尻 修治 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (90353119)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液体 / 分子動力学シミュレーション / 横波 / 動的構造因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
液体の動的構造因子には、異なる振動数をもつ二つ(以上)のピークが含まれている場合があることが、非弾性X線散乱実験や分子動力学法によって明らかにされてきている。ひとつは通常の縦波音波であり、もうひとつは横波の振動を表していると考えられている(T-modeと呼ぶことにする)より低振動の縦波振動である。本研究の目的は、この縦波T-Modeがどのような機構によって生じ、横波と定量的にどのように関係しているのかを局所的な原子のダイナミクスから明らかにすることである。 動的構造因子で観測される量は、波数ベクトルに対して縦方向に振動する密度ゆらぎである。したがって、動的構造因子に横波の情報が現れるためには、横方向の振動と同程度の振動数を示す縦方向の振動が存在している必要がある。 今年度は、液体中の二つの原子に着目し、横方向の振動が縦方向の振動に影響を与えるかどうかをミクロな原子配置をもとに解明することを試みた。これまでに、液体中の二つの原子間の振動を、その原子を結ぶ方向と、それに垂直な方向に分け、縦方向と横方向の振動数を調べる方法を開発してきた。今年度はさらに、周囲の環境によってそれらがどのように変化するかを調べる方法を開発し、古典分子動力学によって求めた統計精度の十分な液体銅の時系列データに適用した。その結果、注目している2原子の近傍に別の原子が存在しているとき、その2原子間の縦方向の振動数は、そうでない場合に比べ小さくなり、横方向の振動に近づくことを発見した。注目している二つの原子A、Bの近傍に別の原子Cが存在しているとき、そのAB間の相互作用は、AB間の直接相互作用だけでなく、Cを介した間接相互作用ACBも含むことになる。横波を起こす復元力は、3原子以上による間接的な相互作用によって起こるので、今回発見した機構は、横波が縦波として観測される可能性をミクロに示す証拠であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、T-modeの起源を解明するための解析方法のひとつを開発し、2原子間の縦方向の振動は、3つめの原子が加わることによって生じる横方向の振動によって、影響を受けることをミクロに定量的に示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり、次のとおり進めていく。
1.T-modeの起源となる機構と横波の起源との関係の解明:T-modeと横波の共通点を探るために、3つ以上の原子に注目して、それらの運動を詳細に調べる方法を開発する。
2.現実の物質を対象にした定量的な研究:長時間の第一原理MDにより高精度で、原子位置、速度の時系列データを求め、T-modeと横波の定量的な関係を解明する。
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Causes of Carryover |
残額1251円は、当初予定していた学会出張の日程を1日短縮したために生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の出張旅費に使用する予定である。
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[Presentation] 液体ビスマスにおける剛体球的集団運動2015
Author(s)
乾雅祝, 梶原行夫, 宗尻修治, 細川伸也, 千葉文野, 尾原幸治, 筒井智嗣, アルフレッド・バロン
Organizer
日本物理学会 2015年秋季大会
Place of Presentation
関西大学
Year and Date
2015-09-19 – 2015-09-19
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