2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05215
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
許 宗ふん 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (50325578)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液晶対流 / ノイズ / パターン形成 / 確率共鳴 / Hopf分岐 / IPSモード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,非平衡システムにおける外部ノイズ応答を調査する.液晶電気対流現象を用いて,外部電気ノイズ下においてその対流発生の閾値や様々な散逸構造を体系的に調べ,以下のような結果が得られた. ①カラーノイズ(カットオフ周波数fc)を定量的かつ連続的制御すると,これまでの知見では予想されていない「逆確率共鳴現象」(Inverse Stochastic Resonance)が発見された.この現象は従来の「確率共鳴現象」(Stochastic Resonance)と異なって,対流閾値のマキシマム(即ち,SNRのミニマム)を示す.これまでは神経系以外では報告された例がない現象である. ②従来の液晶電気対流系で取り上げられたTraveling Wave(TW)について,ノイズ応答を調べると,TWはノイズによって制御できることが分かった.さらに,TWのモデルとして言われている Weak-electrolyte model(WEM)に基づいて実験結果を評価し,このモデルとの整合性と限界を明らかにした. ③上述のTWが高強度のノイズ電界では予想できない振舞いを示し,localized TW (即ち,Worms) が出現する. 以上の結果から非平衡システムを維持する正弦波の役割と,外部ノイズの影響が明らかになりつつある.さらに,これらの役割及び影響の究明のため,一次元の対流セル(in-plane switching mode,即ち,IPSモード)を初めて導入した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液晶電気対流系を用いた非平衡システムにおける外部ノイズの調査は,従来の対流発生の閾値変化(構造の安定性や不安定性)の究明から,新しい現象の発見に進んでいる. ①特に,研究実績の概要のところで述べた「逆確率共鳴現象」(Inverse Stochastic Resonance)は,物理専門ジャーナルPhysical Review E(94,052702,2016)に掲載され,これから「確率共鳴現象」(Stochastic Resonance)と共にノイズ応答の普遍的な現象の一つとして評価される可能性がある. ②さらに,Traveling Wave(TW)に対するノイズ効果の調査は本研究が初めてであり,その理論モデルとして確立されていたWeak-electrolyte model(WEM)の限界を示したことは注目すべきである.原理的にWEMは線形安定性解析による閾値の問題であり,ノイズによる二次的な転移現象には限界がある.これらの研究成果は,物理専門ジャーナルPhysical Review E(2017)の論文として掲載決定されている. ③また,TWにおける正弦波やノイズの役割を明らかにするため,一次元の対流セル(in-plane switching mode)を用いて,従来の二次元の対流セルとの比較を行っている.これは一次元セルには正弦波による対流ロールの欠陥とその運動が現れないことが重要であり,その結果が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要及び現在までの進捗状況で述べた成果を踏まえて,今後,以下の方向性を持って調査を続ける. ①Traveling Wave(TW)については現在,ホワイトノイズでの結果であるが,今後カラーノイズ(カットオフ周波数fc)による調査が必要である.これまでと同様にノイズのカラー化は,予期しなかった結果が現れる可能性が十分ある. ②一次元の対流セル(in-plane switching mode:IPSモード)を用いた調査は,本課題の問題だけではなく,現在の液晶ディスプレイ応用にも重要である.そのノイズに対する安定性問題も含めて液晶基礎・応用の研究の足場になりうる.さらにこのセルはHopf分岐における実験研究には好条件であるため,Hopf分岐現象を体系的に調べる. ③これまでの研究成果と今後の調査結果を十分吟味し,非平衡散逸系における普遍性と液晶対流系の個別性を分析・評価する.
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