2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05219
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
木田 重雄 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (70093234)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歳差 / 回転球 / 安定性 / 不規則反転 / 臨界帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
歳差回転球内部の流れの構造や安定特性を理論的ならびに数値的に調べている。本年度は、歳差が強い極限における定常流の構造を漸近解析によって求めた。この場合は、球面のほぼ全面に渡って球面に沿う薄い境界層(厚さ O(δ))が現れる。ここに、δ=(Re Po)**{-1/2}で、Reはレイノルズ数、Po (>>1)はポアンカレー数である。境界層以外の球内部はほぼ静止しており、球の自転による球面での角速度一定の流れは境界層内で減速し境界層外縁でほぼ静止する。ところが、この境界層の厚さは、球面の場所ごとに異なり、歳差軸に垂直な大円に近づくにつれてますます大きくなる。実際、この大円上では境界層近似に現れる境界層厚さが無限大に発散してしまう。この大円近傍では新たなスケーリング則が成り立ち、動径方向にO(δ**{4/5})、緯度方向にO(δ**{2/5})で軽度方向に細長く伸びた臨界帯が現れる。この臨界帯内の速度場の構造を漸近解析で求めることに成功した。一方、流れの安定性の研究については、定常流の存在境界の特定のための数値シミュレーションを続けており着々と完成に向かっている。存在境界はさまざまな不安定モードによって構成されているが、特に、パラメター値(Re,Po)=(1550,0.165)の近傍での不安定モードに、興味深い振る舞いが観察された。不安定モードの大部分が正弦波的な時間変化を示すのに対し、このモードは不規則な時間反転を繰り返し、しかも反転を除けばほぼ周期的なのである。流体系においては、これまで、乱流状態における不規則反転現象はしばしば観察されているが、層流状態における不規則反転現象は、筆者の知る限り、本研究が初めてである。この現象のメカニズムの解明を現在進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
使用している京大のスーパーコンピュータも手元のパソコンも大きなトラブルがなく計算は順調に進んでいる。定常流の漸近解析や得られた結果の3次元可視化も満足いくレベルになってきており、今はこれらを論文にまとめようとしているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はこれまではおおむね順調に進んでいるので、このまま当初の計画に沿って研究を進める。当面は、定常流の存在境界を求める計算を加速させつつ、これまでの研究を論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
研究は当初の計画通り順調に進んでいるが、国際会議等での講演発表や本論文作成までには至らず、国内外の出張旅費や論文の投稿料などへの出費がと予定より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の研究成果を現在、論文にまとめているところである。本年度の余剰額は、主として、これを国内外での研究会等で発表したり、学術誌に投稿するための経費として使用する予定である。
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