2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K05228
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
彦坂 泰正 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (00373192)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原子・分子物理 / 自由電子レーザー / 光電子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自由電子レーザーと光学レーザーを併用し、原子の電子放出過程の実時間観測を行うことを目指している。昨年度既に理研自由電子レーザーSACLAの硬X線ビームラインを利用し、希ガスのオージェ過程で放出されるオージェ電子に近赤外レーザーによるサイドバンドを形成することに成功している。ただし、硬X線では深い内殻電子のイオン化が主要であり、後続のオージェ過程は複雑となる。また放出されるオージェ電子の運動エネルギーが大きく特定の過程を追うことは電子分光の分解能的に容易でない。そこで今年度はSACLAにおいて新しく共用された軟X線ビームラインBL1の利用し、希ガスの極紫外域イオン化により放出された電子の観測を行った。近赤外レーザーをFELに時間同期して入射することにより、Heの光電子ピークにサイドバンドを形成できることを確認した。この2つのレーザーの時間遅延を変化させることにより、BL1が供給する軟X線FELと光学レーザーのタイミングジッターの決定に成功した。これにより、より典型的な崩壊を示す浅い内殻イオン化後の後続過程を追跡することを視野に入れることができるようになった。まずは、観測が比較的容易であると考えられる数百fs領域のプロセスの観測を行った。具体的には、Xeを41eV程度のFEL光でイオン化し、その多重電離において生成する準安定イオン状態を近赤外レーザーでプローブした。2つのレーザーの遅延時間が数百fs以下としたときには、近赤外レーザーによるイオン化により1eV以下の運動エネルギー領域に新規のピークが観測された。これはXe2+コアをもつRydberg状態に帰属することができると考えられ、その寿命を決定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SACLAの新しい軟X線ビームラインBL1においても光学レーザーとの併用に成功したことは、本研究で目指す原子過程の実時間追跡の適用範囲を広げるものである。また、本研究の最終目的よりも遅い時間スケールであるものの、ポンププローブ分光によりXeのイオン化過程における準安定状態を観測できたことは意義深い。
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Strategy for Future Research Activity |
次の段階として、シングルショットでのサイドバンド計測により、100fs以下の時間スケールでの電子放出過程の観測を目指す。
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Causes of Carryover |
実支出額は概ね計画通りであるが、物品費または旅費として見積もった当初予算の誤差として155,031円の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費または旅費として活用する。
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