2017 Fiscal Year Annual Research Report
Identifications of electron capture sites in molecules induced by collision of highly charged ions
Project/Area Number |
15K05231
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松本 淳 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (10443029)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多価イオン衝突 / 分子解離 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,散乱後に価数分析された多価イオンの同時計測を行うため新たに導入したデジタイザボードを既存のシステムに組み込むための計測プログラムの改造を続けた。2枚のボードをソフトウェア的に同期するための手法が難しく信頼性の高いデータ取得に至っていない。 同時計測システムが未完成でも,研究自体は測定効率が落ちるものの遂行可能である。 アルゴン8価イオンと衝突させ,3電子捕獲された硫化カルボニル(OCS)分子の解離を観察した。入射イオンが衝突後も電子を放出しない場合の解離イオン片の総運動エネルギー(KER)は,入射イオンが2電子捕獲後オージェ電子を1個放出した場合の解離イオン片のKERより高エネルギー側に分布が偏った。一方,2体解離では2つの過程ともKER分布に差がなかった。これは2体解離からもう一段解離が起こる段階で中性粒子放出されるため,このような逐次的に起こる過程が検出できないためだと考察している。 加えて,エチレンを標的として実験を行った。アルゴン8価イオンと衝突させ,2電子捕獲されたエチレンイオンの解離を観察した。入射イオンが2電子捕獲後オージェ電子を1個放出した過程では,準安定エチレン2価イオンの遅延解離が観測された。飛行時間スペクトルにおいてもエチレン2価イオンが観測されたことから,この衝突系において長寿命の状態を持ったエチレン2価イオンが存在する。一方,入射イオンが衝突後も電子を放出しない過程では,遅延解離も飛行時間スペクトルでもエチレン2価イオンが測定されないことから,準安定エチレン2価イオンが存在しないことがわかった。これは衝突径数による状態選別観測が可能で,オーバーバリアモデルからの説明と矛盾がなかった。
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