2015 Fiscal Year Research-status Report
ファネル気体モデルによる細胞内混み合い環境下でのタンパク質複合体形成
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15K05246
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菊池 誠 大阪大学, サイバーメディアセンター, 教授 (50195210)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | αシヌクレイン / 天然変性タンパク質 / アミロイド繊維 / 格子気体モデル / 分子混み合い |
Outline of Annual Research Achievements |
天然変性タンパク質であるαシヌクレインはパーキンソン病の関連タンパク質として知られており、αシヌクレインで作られたアミロイド繊維はパーキンソン病の病態のひとつであるレビー小体の構成要素となっている。いっぽう、αシヌクレインが生理条件下で安定な4量体を作る可能性が実験的に指摘され、アミロイド繊維形成を阻害する可能性があるとして注目されているが、現時点では4量体の存在自体が決着していない問題となっている。 我々はこのαシヌクレインの繊維形成メカニズムを明らかにするために、ファネル気体モデルを構築した。このモデルではαシヌクレイン粒子は複数の内部状態を持つ。単体では天然変性を反映した大きな粒子であり、特定の構造を取らないことを反映して余分の内部エントロピーを持つ。それがアミロイドを形成しうるβヘアピン状態と4量体を形成しうるαヘリックス状態に状態変化できる。 我々は二次元格子上にαシヌクレイン粒子と「分子混み合い」を表現するための詰め物粒子を多数置いて、その熱平衡状態を調べた。明らかになったのは以下のことである。(1)詰め物粒子の効果はαシヌクレイン粒子の内部エントロピーに繰り込むことができ、詰め物分子を露に考慮したモデルと詰め物分子を消去してその分だけ有効内部エントロピーを低くしたモデルとは数学的に等価である(2)αシヌクレインの繊維形成はαシヌクレインと混み合い分子いずれの濃度を上げても促進される(3)4量体が観測されるかどうかは混み合いの程度によって変わる。 この研究結果は既に論文としてまとめ、Journal of Chemical Physicsに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
αシヌクレインのファネル気体モデル構築が予定よりも速く進み、適当なモデル化のもとでは混み合い分子の効果がαシヌクレインの有効エントロピーに完全に繰り込めることが示されたのは予想外の成果であった。また、実験でまだ決着していない4量体の存在について、4量体が観察される実験と観察されない実験では分子混み合いの効果が違っている可能性を示唆できたのも大きな成果である。特に後者は、抽象的に思えるファネル気体モデルで現実の実験結果を議論できることを示した重要なものと言える。 さらに、結果を論文としてまとめ、掲載決定に至ったのは当初計画以上の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
αシヌクレインについては、さらに実験と比較できる計算を進める予定である。 また、現時点ではファネル気体を経験的にいわば「天下り」にモデル化しているが、今後は現実のタンパク質の自由エネルギーランドスケープに基づいて構築する手法を確立する必要がある。そのための手法は既に計画に書いた通りであり、それに沿って研究を推進する。具体的には、いくつかの球状タンパク質を対象として、郷模型(実験で得られている天然構造を基に構築する粗視化タンパク質モデル)を用いた折れたたみシミュレーションを行ない、おれたたみの自由エネルギーランドスケープを計算する。その自由エネルギーランドスケープにもとづいて、粒子の内部自由度に自由エネルギー構造を持たせたファネル気体モデルを構築するのが当面の目標である。 また、現在はファネル気体モデルを二次元格子気体として構築しているが、三次元格子気体、さらには格子を使わない三次元の粒子モデルとして構築することにより、よりリアルなモデルとすることを目指す。
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Causes of Carryover |
論文掲載料として予定していたが、掲載料の請求が年度末に間に合わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、既に掲載された論文の掲載料として使用する。残額は次年度受領分と合わせて研究遂行に使用する。
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Research Products
(3 results)