2018 Fiscal Year Research-status Report
ソフトマターの機能発現によるベシクルの形状変化:単細胞生物の運動理解へ
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15K05247
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
浦上 直人 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (50314795)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 計算物理 / 生物物理 / 高分子構造・物性 / ベシクル / 脂質膜 / 超分子科学 / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベシクルの形状変化を調べることで、細胞運動の理解に対する基礎研究を進めている。ベシクルの形状変化に対しては、ベシクル単体でも多様な形状を示すことから、ゲスト分子をベシクル内部に含む場合と含まない場合で分子動力学シミュレーションを行い、様々な形状のベシクルの再現、および変化を調べた。 ゲスト分子を含まないベシクルの形状変化については、これまで主にベシクルの分裂過程を調べてきた。現在、ベシクルの体積変化におけるベシクル分裂の影響について調べている。また、他の形状への変化についても調べている段階である。さらに、より多様なベシクルの形状を再現するために、これまで脂質6500分子で構成されたベシクルに対し、系を大きくした脂質10000分子で構成したベシクルを用い、シミュレーションを行う準備を開始している。 ゲスト分子を含むベシクルの形状変化については、ベシクル内の高分子鎖の剛直性を変化させることで、棒状から円盤状ベシクルへの変化、その逆の円盤状から棒状ベシクルへの変化を確認した。また、高分子鎖の剛直性をもとに戻すとベシクルの形状も本来ベシクルが持つ固有の形状に戻ることも確認できつつあり、高分子鎖の剛直性の変化によってベシクルの形状を制御できる可能性を見出すことに成功した。ベシクルの形状変化については、ベシクル内における高分子鎖の秩序構造変化が重要であり、現在、形状変化との関係性を明確にしている段階である。 また、細胞運動を理解するために、水溶液中でのベシクルの形状変化だけではなく、基板上におけるベシクルの形状変化を調べることが重要である。そのため、様々な形状を持つベシクルを基板に吸着させ、それにともなうベシクルの形状変化を調べる研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、「タンパク質の会合体の形成・解離のためのシミュレーションモデル構築」、「ゲスト分子を含まないベシクルの形状変化」、「ゲスト分子を含むベシクルの形状変化」の3つの課題に関して研究を進めてきた。「タンパク質の会合体の形成・解離のためのシミュレーションモデル構築」は、研究を担当していた院生が修了したことにより研究が中断してしまったが、新しく「基板上におけるベシクルの形状変化」に関する研究を開始することができた。また、「ゲスト分子を含むベシクルの形状変化」に関する研究に若干進展の遅れが見られていたが、シミュレーション方法を工夫することにより問題を解決することができ、研究の道筋がついたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を継続・融合を目指す。そして、ベシクル内における秩序構造形成とベシクルの形状変化の関係性を調べ、細胞運動や分裂など、生体において重要な現象の理解につなげていく予定である。
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Causes of Carryover |
開催時期の問題で予定していた学会で発表できなかったため、その分の旅費に対して未使用額が生じた。今後の使用計画については、そのまま研究成果発表の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)