2017 Fiscal Year Research-status Report
弱結合条件下の荷電タンパク質間実効相互作用と相挙動における溶媒分子の役割
Project/Area Number |
15K05249
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
秋山 良 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60363347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉森 明 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90260588)
徳永 健 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (30467873)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電解質溶液 / 荷電巨大分子 / 実効相互作用 / 分子シミュレーション / 電気二重層斥力 / 液体の積分方程式理論 / 相挙動 / クーロン系 |
Outline of Annual Research Achievements |
クーロン相互作用が熱エネルギーより充分大きな領域以外での電解質溶液中の荷電巨大分子間の実効相互作用およびその相挙動の理解を目指して研究を開始した。まず、液体の積分方程式理論を用いて同符号荷電巨大分子間の実効相互作用を計算した。モデルは荷電剛体球モデルを用いた。 その結果、いわゆるDLVO理論とは異なった共イオン価数依存性がみられた。通常のDLVO理論では、イオン強度が同じであれば、共イオン価数を変えても同符号荷電巨大分子間の静電遮蔽の強さには変化がない。これは電気二重層斥力が線形化されたポアソンボルツマン方程式の解から求められているからである。しかし、少し電荷が大きくなり、また電解質濃度が高くなると線形近似では不十分になる。例えば、価数が大きくなることでその条件は不十分になる。その結果、実効相互作用の形状はよく知られた電気二重層斥力の形に似ているが、その遮蔽の強さは変化する。一方で、カウンター電荷のイオンの濃度を一致させると、実効相互作用は同符号荷電巨大分子間の実効相互作用はほとんど一致してしまう濃度および荷電領域が存在した。この場合、イオン強度は当然変化している。それにもかかわらず、同符号荷電巨大分子間の実効相互作用は互いに一致するのである。この結果は、その濃度および荷電領域では、共イオンが荷電巨大分子間から排斥されてしまい、静電遮蔽は主に対イオンによって行われているからであると予想できる。このアイディアは、電解質溶液中の膜間距離に関する実験結果の解釈と似ている。 それらの実効相互作用を用いて電気二重層斥力で反発し合う巨大分子の作る”液体”構造を分子シミュレーションを用いて計算中でありいくつかのケースについては結果が得られつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共イオンの価数依存性の効果などの解釈は予想を超えて進んだ。また、シミュレーションとの組み合わせも進みつつある。一方で、相図の計算の進捗状況が思わしくない。しかし、良い方針が最近掴めたので、今後相図の計算および結果の論文化を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
巨大分子が有限濃度の場合の実効相互作用の扱い方の再検討を行ったところ実効的な直接相互作用を少し修正する方法でとり入れることができそうである。また、モデルの再検討により相図の計算をまとまる形で計算する算段がつきつつある。この研究を進めることで、相図により平衡クラスターの存在について検討する当初のもう一つの目的について達成することができそうである。それらの研究を進めたい。 また、モデルの再検討で分子シミュレーションを用いた相図に関する検討も進めることができそうなので行いたい。 また、また論文化していない成果があるので、まずはそれを今後進めてゆく予定である。
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Causes of Carryover |
研究成果はまとまりつつあるが、平成29年度に巨大分子の拡散や相図に関する議論が発展し、研究分担者との共著論文および学会発表のために次年度使用が生じた。
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Research Products
(18 results)