2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05250
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
好村 滋行 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90234715)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 隆一 首都大学東京, 理工学研究科, 特任助教 (10636385)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | マイクロレオロジー / ソフトマター / 細胞 / 異常拡散 / 揺動散逸定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体膜と細胞骨格の相互作用のように、生体膜の外部環境における非熱的なゆらぎによって誘起される膜の非平衡ゆらぎついて考察した。具体的には、ランダムな速度を発生するアクティブな壁と相互作用する生体膜のブラウン運動の解析を行った。ポテンシャルで束縛された膜の流体力学方程式を解くことにより膜の変位の運動方程式を導出し、膜断片の平均二乗変位を計算した。壁が静的な場合、すなわち熱ゆらぎしか存在しない場合、平均二乗変位は時間の2/3乗と1/3乗で増加する領域が見られる。一方、壁がランダムな速度を発生する場合、平均二乗変位が時間に比例する時間領域が存在することがわかった。これは膜のブラウン運動としては異常な振る舞いである。さらにアクティブな壁が特徴的な時間スケールを有する場合、平均二乗変位が時間に比例する領域がさらに拡大することもわかった。我々の結果は、赤血球膜の非平衡ゆらぎを測定した最近の実験結果とも一致している。 アクティブな力双極子を有する粘弾性体中のブラウン運動について検討した。粘弾性体は二流体モデルで記述し、タンパク質を模倣したアクティブな力双極子の相関は特徴的な緩和時間をもつとした。プローブ粒子の平均二乗変位を計算した結果、熱ゆらぎのみ存在する場合、平均二乗変位は時間の0乗から1乗の間で変化することを求めた。一方、アクティブな力双極子によって、平均二乗変位は時間の0乗から2乗の間の全ての異常拡散が起こることを導いた。我々の結果は、近年の細胞中の異常拡散の振る舞いを適切に説明しており、生きている細胞と死んだ細胞では異常拡散のメカニズムが異なることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究成果のうち、非平衡環境下における生体膜のゆらぎ、粘弾性体中のアクティブな力双極子による異常拡散、脂質二重膜ベシクルの緩和ダイナミクスについては、すでに論文として出版している。したがって、研究はおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成29年度は、研究成果全体のまとめを行う。 その中でも特に、粘弾性体中のマイクロマシンの遊泳に関する研究を完成させる。具体的には、二流体モデル中のマイクロスイマーの挙動を調べることを目的とする。特にスイマーのサイズとメッシュサイズの大小関係が、遊泳速度にどのように影響するかについて検討する。二流体モデルには、弾性体ネットワークのメッシュサイズに相当する特徴的な長さスケールが存在する。一方、三つ玉スイマーは球の大きさ、アームの長さなどの複数の長さスケールを持っている。そのため、それぞれとメッシュサイズの大小関係を考えて、遊泳速度を解析的および数値的に求める。 また、粘弾性体中のマイクロマシンの拡散現象に関する研究も行う。具体的には、2つの球をバネで結合したマイクロマシンのモデルを考え、熱ゆらぎ及び非熱ゆらぎによって誘起される拡散を計算する。熱的ゆらぎは揺動散逸定理に従うが、非熱的揺らぎが存在すると揺動散逸定理が破れる。非熱的ゆらぎの存在下では、ランダムな運動から一方向の運動が選択される遊泳モードが現れることが予想される。
|
Causes of Carryover |
平成28年度は主に解析的な研究を優先的に進めたために、大規模な数値シミュレーションは行わなかった。そのため、高額なワークステーションは購入せず、主にパソコンを数台補充するにとどめたことにより、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には、数値シミュレーションを行うため、ワークステーションを購入する予定である。また、2017年11月に仙台で開催される国際会議International Symposium on Fluctuation and Structure out of Equilibrium 2017に大学院生6名が参加予定であり、旅費として用いる予定である。
|