2017 Fiscal Year Research-status Report
トポロジーによるソフトマターの分子間相互作用の制御
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15K05255
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
鈴木 次郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 研究機関講師 (40415047)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | リングポリマー / シミュレーション / 鎖の拡がり / 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は平成27年10月に採択、課題開始となり半年の遅延が発生したが、平成29年度末には遅延は解消した。27年度にはリングポリマーの分子間相互作用を計算し、詳細に解析するためのシミュレータの研究開発とプログラムの検証作業を行った。28年度には相互陥入型(catenated-ring)の分子間相互作用について計算を開始し、おおむね順調に計算結果を得た。29年度には、この計算結果に対する理論的な考察を行ったところ、計算結果をよく説明する結論に至り、学会発表4件を行った(国際シンポジウム発表1件を含む)。 上記と平行して、バルク中におけるリング型ブロック共重合体の分子間相互作用を検討している。分子鎖のトポロジー(リニア型 or リング型)によって制御されるミクロ相分離構造を比較検討行ったところ、リングポリマーは二次元における回転対称性を持たない構造の発現を見いだし、現在特性評価を行っている。 本課題は半年遅れで課題開始となったが、遅延をほぼ解消し学会発表に至っている。最終年度の30年度には国際雑誌へ論文発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーションの計算時間が短時間で行える希薄溶液中の孤立鎖を中心に計算を進めている。ここではふたつのtrivial-ringが組み合わさったcatenated-ring分子に注目し、ふたつのtrivial-ring間に働く分子間相互作用について計算と解析を行っている。排除体積を持つ鎖を輪にしてかみ合わせ、排除体積を遮蔽するセグメント間引力を与え非摂動状態を実現することで、トポロジー効果起因の分子間相互作用をシミュレーションから得た。その結果、相互に咬み合わさった2つのリングは鎖自身の排除体積が遮蔽された非摂動状態においても互いに斥力を持っていることがわかった。 一方で理論的考察から、catenated-ringの非摂動状態の回転半径の自乗平均のセグメント数依存性を導いたところ、その分子全体の拡がりはシミュレーション結果よりやや小さいことがわかり、シミュレーション結果を裏付ける結果となった。昨年度4件の口頭発表を行い、これらの結果を30年度に論文にまとめる予定である。 リング型ブロック共重合体がバルクにおける相分離構造についても同時並行でシミュレーション演算を行い、ABCD型テトラブロック共重合体が柱状構造(二次元構造)を作る場合に回転対称を持たないことを見いだした。この構造は安定相であることから非線形光学素子としての利用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の進捗状況に示すように、希薄状態におけるcatenated-ring分子内におけるtrivial-ring間の相互作用について学会発表を行う予定で、さらには評価の高いジャーナルに報告を行う予定である。一方でバルク中でのリング型ブロック共重合体の振る舞いについてもより詳細な検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
1143円の残金が発生した。この額は旅費や物品購入額としては小さいため次年度予算に繰り越して、30年度予算と合わせて執行する予定である。
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