2016 Fiscal Year Research-status Report
循環境界上での海上風の変調が海洋循環系へ及ぼす影響
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15K05279
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷本 陽一 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (00291568)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 循環境界 / 海上風 / ロスビー波 |
Outline of Annual Research Achievements |
太平洋のように両半球に跨がる大規模な海盆内には,亜熱帯循環と亜寒帯の循環境界だけでなく,赤道循環と亜熱帯循環との間にも明瞭な循環境界が形づくられる.これら低緯度における循環境界上では偏東貿易風が定常的に海洋に運動量を注入している.しかしながら,この運動量注入を渦度の注入として見直すと,熱帯収束帯近傍における海上風の水平シアーや赤道をまたぐコリオリパラメーターの変化のため,比較的狭い緯度帯で複雑な南北変化を示す.また,赤道近傍の太平洋は概ね表層と下層に2層に分けて考えることが可能であり,渦度注入に対して海洋表層はロスビー波の励起とその伝播として応答する.このような大気強制・海洋応答は,熱帯太平洋域の大気海洋結合変動に対して重要な役割をもつが,東太平洋域における大気強制とロスビー波応答について,過去の観測事実をもとにその役割を議論した研究は少なかった.本研究では,1.5層のロスビー波モデルに対して,過去約20年にわたる観測データに基づいた渦度の注入を試み,海面高度の計測として表されるロスビー波の励起やそれらの伝播がエルニーニョやラニーニャの発生とともに生じていることを再現することに成功した.特に,エルニーニョ(ラニーニャ)の発生時に生じる東部太平洋上で赤道を跨いだ低圧偏差(高圧偏差)周辺の地衡流偏差と赤道近傍のコリオリパラメーターの変化によって形成される東西風成分の南北シアーが渦度偏差の主要因であることを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
亜熱帯循環と亜寒帯循環の循環境界とは別の循環境界における海上風の役割についても研究成果を得ることができ,研究は概ね順調に遂行できていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
大気強制・海洋応答の中心に進めて来たので,今後は強制された海洋が大気場へどのように再帰するかを検討する.
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Causes of Carryover |
過去に購入した研究室の物品を活用することで,物品費が節約となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度となるので,本課題による研究成果を長期保存するための物品として用いる計画である.
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