2016 Fiscal Year Research-status Report
成層圏突然昇温・極渦強化の予測可能性と対流圏への影響
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15K05286
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
田口 正和 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (50397527)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 成層圏突然昇温 / 予測可能性 / 惑星波強制 / 再解析データ比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年(2016年)度は、気象庁長期再解析(JRA-55)データと気象庁1ヶ月予報データ(事後予報実験データ)を用いて、成層圏突然昇温(SSW)予報の悪化につながる要因を調査するとともに、JRA-55再解析データの特性についても検討した。 SSWは、冬季北半球成層圏の代表的な顕著現象で、その予報の様子や対流圏へのインパクトは、多くの関心を引き付けている。そのため、本研究は、前年度までに、SSWなどの成層圏予報を概観し、その重要な結果のひとつとして、SSWの予報誤差は、極渦が伸長あるいは分裂する事例でより大きいことを示した。今年度は、その原因を、SSWを引き起こす惑星波強制などに着目しさらに検討した。その結果、現実の極渦伸長・分裂型のSSWは、対流圏での東西波数2成分の強化(気候値からの偏差により寄与される)によってもたらされているが、予報データはこの特徴を示さない、したがって極渦伸長・分裂型のSSWも予報しにくいということが分かった。このことは、当該予報システムが、対流圏での惑星規模の非定常成分の構造・振幅・持続性・地域性などをよく予報しない(再現しない)ことを示唆する。 前述のように、本研究は、予報データの検証にJRA-55再解析データを現実とみなして利用している。JR-55データは、その標準プロダクト(STDD)に加えて、2つの派生プロダクト(CONV:衛星観測データを同化しないもの、及び、AMIP:観測データを一切同化せず、大気モデルをフリーに走らせたもの)を持っており、ここでは、それらを比較して、JRA-55データの特性を検討した。その結果、CONVは、中高緯度成層圏の気候状態では、STDDと似ているが、SSWをいくつか過小表現していることが分かった。一方、AMIPは、STDDと比べて、極渦がかなり強く、SSWの頻度がずっと少ないという特徴がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでで(3年計画のうち2年経過)、SSWなど北半球成層圏における予報の概観、その特徴付け、さらにその要因調査などを進め、それらの結果は、学会発表や論文として公表することができた。これらの結果は、さらに、より長い時間スケールでの成層圏予報や、対流圏との関連などの問題へと発展させることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果をふまえ、次年(2017年)度には主として次の二点に取り組む。 1.気象庁1ヶ月予報データ(事後予報実験データ)を用いて、SSWなど成層圏の様子と、対流圏(北半球環状モードNAM、ブロッキング、など)の予報の様子が、どのように関連しているのか検討する。先行研究は、成層圏極渦が通常より強いもしくは弱いときに予報を開始すると、対流圏NAMの予報スキルが向上する結果を示している。本データで、この結果の再現性やさらなる特徴(予報期間への依存性、成層圏・対流圏偏差の構造への依存性、など)を検討し、対流圏予報における成層圏の相対的重要性を精査する。 2.これまでは、SSWなどの予報を、1~2週間程度の時間スケールで検討していたが、この時間スケールを長くする。気象庁季節予報データ(事後予報実験データ)が最近利用可能になったことをうけ、SSWなどが季節予報のスケールでどのように予報されているか検討する。すなわち、晩秋に予報を開始した際、真冬のSSWの発現を予報できるか否か、予報の様子が外的条件(準二年周期振動、エルニーニョ・南方振動、など)に依存するかどうかなどを検討する。
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Causes of Carryover |
学会出張旅費や論文出版費用への支出が、想定のようにできなかったので、次年度使用額が生じた。 学会出張旅費については、2016年度は、関連の深い学会(特に国際学会)が少なく、出席・発表の機会が限られた。論文出版費用については、論文準備・審査等に時間がかかり、2016年度内に出版費用を支払う段階に至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この次年度使用額を2017年度分予算と合わせて、学会出張旅費(特に国際学会)や論文出版費用などに使用する予定である。
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Remarks |
愛知教育大学 研究者総覧 田口正和 https://souran.aichi-edu.ac.jp/profile/ja.85c7a39ccb5c8e70b07031094a0c261d.html
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