2015 Fiscal Year Research-status Report
新たな電波掩蔽データ解析手法による火星大気の主成分混合比変動の解明
Project/Area Number |
15K05289
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
野口 克行 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (20397839)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 火星 / 二酸化炭素 / 過飽和 / 極夜 / 電波掩蔽観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に米国の火星探査機MGSの電波掩蔽観測データを用いて、極夜時の火星大気中の二酸化炭素(CO2)混合比を推定する作業を実施した。研究実施計画において想定した3つの手法のうち、火星大気におけるCO2の混合比が高度一定と仮定して大気組成比を導出する手法(手法a)については、本研究開始前にすでに実装し試験的な導出作業を試みていたが、今年度においては全対象データに対して処理を行った。2つ目の手法(手法b)としては、数値モデルによるCO2混合比の鉛直分布を援用して鉛直分布の形のみを得て、最下端の気温の解がCO2凝結温度になるように比例係数を得ることで、組成比の鉛直分布を導出する手法である。この手法については、本研究の開始時点では未実装であったため、研究協力者の助言等も得ながら実装を行い、動作することを確認した。試験的に導出した例においては、大気下層において手法(a)で得られた気温よりも手法(b)で得られた気温のほうがCO2飽和曲線に近くなり、気温の鉛直勾配もよりCO2飽和曲線の傾きに近づくという結果が得られた。これは、数値モデル内において、大気下層ではほぼCO2を飽和させていることとコンシステントである。さらに3つ目の手法として、数値モデルによるCO2混合比の鉛直分布の形も用いずに観測データのみからCO2混合比の鉛直分布を得る手法(手法c)においては、混合比の鉛直分布に様々な拘束条件を与えた上で反復計算を行うことで、現実的なCO2混合比の鉛直分布が得られることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において挙げた各手法を実装し、対象データに対して計画時に想定した処理を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画では、得られたCO2混合比の鉛直分布に対して非現実的な解が得られるかどうかのみをチェックする予定であったが、現実的な解であったとしても数値モデルとの差が比較的大きいケースなどが見つかった。そのため、上述した手法(c)で得られた解(観測データのみから得られた解)に対して、まずは数値モデルとどの程度の差が出るかを詳細に検討し、必要に応じて数値モデルを開発した研究者と議論することを考えている。
|
Causes of Carryover |
当初、旅費を多く見込んでいたが想定よりも少ない額に収まったこと、また、次年度において発表や打ち合わせ等の旅費が多く見込まれたことから、ある程度まとまった金額を繰り越す必要が生じた。そのため、物品費については、他予算や計算機の更新を見合わせるなどしてできるだけ使用を抑え、次年度以降に使用することとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、本研究内容に良く合致する研究会が欧州で催される予定であることから、その学会に合わせて欧州内の研究協力者も訪問することで旅費を使用する予定である。また、必要に応じて計算機の更新にも使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)