2015 Fiscal Year Research-status Report
マルチコプターを用いた沿岸域海色リモートセンシング技術の開発と実用化
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15K05290
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大石 友彦 東海大学, 清水教養教育センター, 教授 (20231730)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 後方散乱係数 / 沿岸水 / 植物プランクトン / 多波長イメージ分光放射計 / 海色リモートセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸域は高い基礎生産を有すると共に社会活動と深く関わっている。しかし,1)衛星に搭載された海色センサは空間分解能が粗い,2)陸地の影響を受けるため,極めて複雑な補正が要求される,3)沿岸水に含まれる物質の光学的固有特性に関する知見が乏しい等の理由により適用が困難である。本研究では以下に記す対応を行い、これらの問題の解決に当たった。
1),2)に対する対応:小型多波長イメージ分光放射計(12波長)を開発し、マルチコプターに搭載し沿岸域の観測を行った。結果の一部を日本海洋学会(秋季。春季)の学会で発表した。また、本装置を用いた観測データの解析を行い、その結果を日本リモートセンシング学会に論文として投稿し、受理された。これによってマルチコプターを用いた沿岸域の海色リモートセンシングの基盤技術が確立できたと考えている。
3)に対する対応:以前、研究代表者は測定が最も困難な海水による後方散乱係数を簡便に推定する方法を提案し、現在では国際的な標準測定法として、アメリカの2メーカーが製品化している。しかし、最近の研究によると、このバイパス法は,外洋では十分な精度で推定できるが,植物プランクトンが豊富な沿岸域では誤差が約20%になる可能性が示唆されている。2015年度では2つの散乱角(120°,170°)から後方散乱係数を誤差3%で推定できる新しい方法を開発しApplied Opticsに論文として発表した。この方法は外洋から沿岸水まで,さらには植物プランクトンが異常増殖(例えば赤潮など)した海域でも誤差3%で推定できる。即ち,沿岸域の海色から情報を抽出するアルゴリズムの開発を行える環境を整える事ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は社会活動と深く関わっている沿岸域の海洋環境を海色リモートセンシングを用いて観測する技術を確立する事にある。沿岸域の海色データを解析する上で重要かつ測定困難な後方散乱係数を精度高く推定する方法を開発できた。即ち、海色データを解析できる環境を整える事が出来たと考えている。また、超小型の多波長イメージ分光放射計を製作し、考案した測定原理に問題が無いことを確認できた。換言すれば、海色を観測する手段とそれによって得られたデータを解析する手段を確立できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
マルチコプターは運用が簡単である反面、積載重量に大きな制約があるばかりではなく、海色観測で重要な機体の正確な制御も困難である。この問題を解決するため、前年度では対象海域をイメージとして分光する放射計開発を大きな目標として研究を行ない、その作動を確認した。これによって機体の正確な制御の問題から開放され、マルチコプターによる海色観測の本格運用の基盤技術が整えられた。本年度は、昨年度の開発した装置をベースに、性能のさらなる向上を見据え、現場での長期使用に耐えうる実用的なイメージ分光放射計を開発する。年度後半では、開発した装置を用い現場での観測を行い、詳細な性能評価を行う予定である。また、光学的に異なった沿岸域での観測を行い、装置の実用性を検証する。
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Causes of Carryover |
当初の設計計画を再検討し、光学系の単純化を達成した多波長イメージ分光放射計を試作した。その結果、使用する光学部品点数を大幅に削減できた。このため、当初予算より少ない研究費となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度では、試作した多波長分光放射計に基づき、さらなる性能向上と実用性を両立した超小型多波長分光放射計を製作する。また、現有マルチコプターは飛行時間が20分である。分光放射計の作動確認には対応できるが、本格的な観測には不十分である。このため、観測を念頭に置いたマルチコプターを製作する(飛行時間最低40分)。新型マルチコプターにイメージ分光放射計を搭載し、駿河湾を中心とした観測を行う(旅費。人件費)。
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Research Products
(5 results)