2017 Fiscal Year Research-status Report
電離圏プラズマ高速フローチャネルとそのインターフェースにおける時間空間発展
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15K05300
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田口 聡 京都大学, 理学研究科, 教授 (80251718)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電離圏 / 極域 / プラズマフロー / 中性大気 / オーロラ / カスプ |
Outline of Annual Research Achievements |
地球の高緯度電離圏に存在する大規模な2つ渦のプラズマの流れの中には,局所的に狭いチャネルとなって高速の流れが生じている領域が数多くある.本研究では,このような領域におけるプラズマと中性大気の相互作用によって生じている現象の物理過程を明確にし,それらを統一的に表現できるモデル化を行うことを主たる目的としている. 本年度は,フローチャネルの領域を通って遠方へと延びている磁力線上にしばしば現れる準定常的な沿磁力線電位降下が,チャネルの形成に重要な役割を果たしているのかどうかを明らかにすることに焦点を置いた.沿磁力線電位差と,そこに流れている沿磁力線電流の密度,電位差の領域の水平空間サイズについて,観測から得られている典型的な量を,MHDの範囲で磁気圏側のプラズマの流れの渦度の変化として説明できるのかを調べた.具体的には,沿磁力線電位降下領域が磁力線を介してつながる夕方側磁気圏の赤道面において,モデル化されたプラズマ渦度分布を与え,それがどの程度乱される必要があるのかを計算するアプローチをとった.その結果,磁気圏の渦度の乱れを沿磁力線電位降下領域に関わる諸量と明確に関係づけるのは難しいことがわかった.このことは,準定常的な沿磁力線電位降下が生じるかどうかは,フローチャネルの形成過程とはほとんど関わっていないことを示唆しており,沿磁力線電位降下があることで生じる加速電子による電離圏の局所的な電気伝導度の増大については,フローチャネルの形状とは独立したものとしてモデルに組み込んでよいこともわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで用いてきたシミュレーションの方法の一部を改良する必要があることがわかり,それに伴って,スパコンでの新たな計算に取り組むことになったため.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで進めてきた大枠の方針に従い,引き続き,電離圏のプラズマの流れの大きな構造の中に,小規模な構造が埋め込まれていることで生じている現象の同定とその物理過程を明らかにしていく.特に,フローチャネルと共存しうる電気伝導度の局所的な増大や背景の中性の風の分布を柔軟にとりこんだモデリングを一層進めていく.
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Causes of Carryover |
より詳細な結果に到達するためには,これまで用いてきたシミュレーションの方法の一部を改良する必要があることがわかり,それに伴うスパコンでの新たな計算や,得られた結果の学会発表や論文投稿を次年度に回すことになったため.
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Research Products
(10 results)