2016 Fiscal Year Research-status Report
磁気圏編隊観測を用いた三次元磁気リコネクションの研究
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15K05306
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
長谷川 洋 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (50435799)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁気リコネクション / 編隊衛星観測 / 磁気圏界面 / 電子電磁流体力学 / 電子拡散領域 / エネルギー散逸 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、磁気リコネクションのエンジン部分である電子拡散領域とその周辺の二次元磁場・電子速度場構造をその場観測から再現するためのデータ解析手法を、実際の衛星観測データに初めて適用し、現実の電子拡散領域の構造を再現することに成功した。磁気圏の昼側境界における磁気リコネクションの拡散領域は、Magnetospheric Multiscale(MMS)衛星による2015年10月16日の観測によって同定された(Burch et al., 2016)。我々は、電子の電磁流体(EMHD)方程式に基づいて、非圧縮反平行磁気リコネクションの拡散領域を、磁場と電子流体パラメータの観測データから再現する手法を27年度中に開発した。しかし、磁気圏境界は非対称電流層であり、密度が電流層を横切って変化するため、開発したEMHD法が実際の観測データに適用できるかどうかは不明だった。 本研究では、EMHD法を用いて磁気リコネクション領域で期待されるXタイプの面内磁場構造や、四重極のホール磁場構造が、2015年10月16日のMMS衛星の観測データから再現されることを検証した。結果からは、MMS衛星はエネルギー散逸が起こる磁気リコネクション領域のよどみ点近傍を観測したが、リコネクションラインはMMS4衛星が構成する四面体内には存在せず、もっとも近づいた時でも数km離れたところにあったことが判明した。また、リコネクション電場は0.42-0.98 mV/mであったこと、二次元構造を仮定して再現することはできたが、無視できないほどの三次元構造がよどみ点近傍に存在することを明らかにした。本研究では、EMHD法が磁気リコネクションの拡散領域の構造を把握するのに有用であることが実証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反平行磁気リコネクションの電子拡散領域の二次元構造を、非圧縮かつ電子慣性が無視できるという仮定の下で、その場観測から再現するデータ解析手法の開発と試験が完了した。この手法をMMS衛星による実際の電子拡散領域の観測データに適用し、磁気リコネクション領域の構造を再現することに成功した。これらの研究成果の一部はすでにJournal of Geophysical Research-Space Physics誌に出版され、一部は現在査読中である。 また、MMS衛星は2015年9月8日に、磁気圏の午後側でケルビン・ヘルムホルツ(KH)不安定にともなって発生した磁気リコネクションを観測したが、このイベントを模擬した三次元粒子シミュレーションと観測データとの比較によって、この時の磁気リコネクションについても次のような新たな知見が得られつつある。① KH不安定は初期の非線形段階にあり、KH渦の流れによって駆動された磁気リコネクションがMMS衛星によって観測された。② 渦駆動の磁気リコネクションは、自発的に乱流を生み出し、その後、三次元的な乱流リコネクションが発生する。③ 乱流的な磁気リコネクションによって、効率的なプラズマ混合が起こり、これが磁気圏脇腹におけるプラズマ輸送に寄与している可能性がある。このような成果が得られてきているので、研究はおおむね順調に進展していると考える。 しかし、MMS衛星の磁場やプラズマ速度の編隊観測のデータから、三次元磁気リコネクションや三次元渦乱流における重要な構造である、磁場のヌル点やセパレータ、渦中心や渦コアを同定する試みについては、進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
MMS衛星搭載の観測器は、ほぼすべてが正常に機能しており、2016年3月からは科学的な解析に使用可能なLevel-2データが順次公開されている。したがって本研究課題の遂行に必要な観測データは問題なく得られる見込みである。年に二回ほど開催されているMMSミッションのサイエンスチーム会議や米国地球物理学連合と同時期に開催される会合などに定期的に出席し、情報交換などを行うとともに、本研究課題の遂行に必要な打合せや議論を行う。2017年5月からは、磁気圏尾部における磁気リコネクションや関連する現象の観測に集中する。本研究も、その観測フェーズに沿って推進する。 EMHD方程式に基づいた電子拡散領域の再現法(EMHD法)については、電子慣性を考慮した手法へと改良していく必要がある。これにより、電子慣性項が重要な役割を果たしていると考えられている非対称リコネクションのリコネクションラインごく近傍の領域を再現することができるようになると考えている。また、現実にはリコネクションラインに沿った方向にも非一様性があることが分かってきているので、二次元構造だけでなく、三次元構造を再現するためのデータ解析手法も開発していく必要があると考えている。これについてはまだ具体的な形となったアイデアがないので、引き続き米国ダートマス大学のSonnerup教授やDenton教授と検討を継続してゆく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、平成28年度中に参加することを予定していた学会(AGU Chapman Conference on Dayside Magnetosphere Interactions)が平成29年度中の開催に延期となり、海外旅費の使用分が当初の予定よりも少なくなったからである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、平成29年度中の開催に延期された学会(当初から参加を予定していた)、中国の成都で7月に開催予定のAGU Chapman Conference on Dayside Magnetosphere Interactionsに出席するための海外旅費として使用する。
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Research Products
(33 results)
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[Journal Article] Shift of the magnetopause reconnection line to the winter hemisphere under southward IMF conditions: Geotail and MMS observations2016
Author(s)
Kitamura, N., H. Hasegawa, Y. Saito, I. Shinohara, S. Yokota, T. Nagai, C. J. Pollock, B. L. Giles, T. E. Moore, J. C. Dorelli, D. J. Gershman, L. A. Avanov, W. R. Paterson, V. Coffey, M. O. Chandler, J.-A. Sauvaud, B. Lavraud, R. B. Torbert, C. T. Russell, R. J. Strangeway, J. L. Burch
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Journal Title
Geophysical Research Letters
Volume: 43
Pages: 5581-5588
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Thick escaping magnetospheric ion layer in magnetopause reconnection with MMS observations2016
Author(s)
Nagai, T, N. Kitamura, H. Hasegawa, I. Shinohara, S. Yokota, Y. Saito, R. Nakamura, B. L. Giles, C. J. Pollock, T. E. Moore, J. C. Dorelli, D. J. Gershman, W. R. Paterson, M. O. Chandler, V. Coffey, C. T. Russell, R. J. Strangeway, M. Oka, and J. L. Burch
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Journal Title
Geophysical Research Letters
Volume: 43
Pages: 6028-6035
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Reconstruction of the electron diffusion region observed by MMS: First results2016
Author(s)
H. Hasegawa, B. U. O. Sonnerup, R. E. Denton, T. D. Phan, T. K. M. Nakamura, B. L. Giles, D. J. Gershman, J. C. Dorelli, J. L. Burch, R. B. Torbert, C. T. Russell, R. J. Strangeway, P.-A. Lindqvist, Y. V. Khotyaintsev, R. E. Ergun, N. Kitamura, and Y. Saito
Organizer
AGU 2016 Fall Meeting
Place of Presentation
San Francisco
Year and Date
2016-12-12 – 2016-12-16
Int'l Joint Research
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[Presentation] Shift of the magnetopause reconnection line to the winter hemisphere under southward IMF conditions: Geotail and MMS observations2016
Author(s)
N. Kitamura, H. Hasegawa, Y. Saito, I. Shinohara, S. Yokota, T. Nagai, C. J. Pollock, B. L. Giles, T. E. Moore, J. C. Dorelli, D. J. Gershman, L. A. Avanov, W. R. Paterson, V. N. Coffey, M. O. Chandler, J. A. Sauvaud, B. Lavraud, R. B. Torbert, C. T. Russell, R. J. Strangeway, and J. L. Burch
Organizer
AGU 2016 Fall Meeting
Place of Presentation
San Francisco
Year and Date
2016-12-12 – 2016-12-16
Int'l Joint Research
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[Presentation] Reconstruction of the magnetic reconnection region observed by Magnetospheric Multiscale2016
Author(s)
長谷川 洋,B. U. O. Sonnerup, R. E. Denton, T. D. Phan, T. K. M. Nakamura, B. L. Giles, D. J. Gershman, J. C. Dorelli, J. L. Burch, R. B. Torbert, C. T. Russell, R. J. Strangeway, P.-A. Lindqvist, Y. V. Khotyaintsev, R. E. Ergun, 北村 成寿,齋藤 義文
Organizer
地球電磁気・地球惑星圏学会第140回講演会
Place of Presentation
福岡
Year and Date
2016-11-19 – 2016-11-23
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[Presentation] Reconstruction of the electron diffusion region observed by MMS: First results2016
Author(s)
H. Hasegawa, B. U. O. Sonnerup, R. E. Denton, T. D. Phan, T. K. M. Nakamura, B. L. Giles, D. J. Gershman, J. C. Dorelli, J. L. Burch, R. B. Torbert, C. T. Russell, R. J. Strangeway, P.-A. Lindqvist, Y. V. Khotyaintsev, R. E. Ergun, N. Kitamura, and Y. Saito
Organizer
First MMS Community Science Workshop
Place of Presentation
Los Angeles
Year and Date
2016-09-07 – 2016-09-09
Int'l Joint Research
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[Presentation] MMS satellites and EISCAT radar observations of dayside flow bursts2016
Author(s)
Ieda, A., Y. Ogawa, S. Oyama, N. Kitamura, Y. Saito, S. Yokota, H. Hasegawa, S. Taguchi, K. Hosokawa, S. Machida, H. Uchino, T. Hori, C. Pollock, B. Giles, T. Moore, C. Russell, R. Strangeway, R. Nakamura, and J. Burch
Organizer
JpGU 2016 Meeting
Place of Presentation
Chiba
Year and Date
2016-05-22 – 2016-05-26
Int'l Joint Research
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